季節はずれ?の手足口(てあしくち)

 医療機関には毎週、「宮崎県感染症週報」が送られてきます。それを見ますとこの時期でも群を抜いて多いのが下痢や嘔吐を繰り返す感染性胃腸炎です。そのほか流行性角結膜炎、流行性耳下腺炎のほか、ヘルパンギーナ、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎などの発生件数が多くなっています。さらに夏の盛りを過ぎたこの時期になっても、報告件数が減らない感染症のひとつに手足口病があります。先週、20歳の男性が「口内炎がひどくて食事がとれない」といって受診されましたが、実は足の裏や手のひらに水泡をともなっており、いわゆる手足口病と考えられました。そこで手足口病がなぜ起こり、どのような病気で、口内炎以外に積極的な治療は必要なく、体を十分に休めるように説明しました。成人が罹患(りかん)することは少なく、乳幼児期に多い病気で、夏に多いといわれながら最近では涼しくなりかけた秋口や冬場にも見られることが多くなった手足口病についていっしょに勉強してみましょう。
1.手足口病(Hand,Foot and Mouth Disease:HFMD)とは
 手足口病は、口の中や手のひら、足の裏などに米粒大の、水泡性の発疹(ほっしん)が現れるのが特徴で、このために手足口病と呼ばれています。水疱には痛みやかゆみもなく、熱も微熱程度であり、手足口病にかかっても子供たちは比較的元気です。ただ、口の中にできた水泡が破れてしまうと、食べ物がしみてしまい食欲が落ちるので口あたりがよく、のどごしのよいものを与えて脱水や低栄養状態にならないように注意してあげたいものです。水分も取れない状況では点滴を必要とすることがあります。手足口病は乳幼児を中心に夏に流行するウイルス感染症で、わが国では1960年代にその存在が明らかとなり、最近まで1985年、1990年、1995年、2000年と約5年おきに大流行を繰り返しています。
2.手足口病の原因となるウイルス
 手足口病の原因となるウイルスはエンテロウイルスであるコクサッキーA16型(CA16)、エンテロウイルス71EV71)、コクサッキーA10型(CA10)がよく知られています。これ以外にも手足口病の原因となりうるエンテロウイルスはたくさんあるといわれておりますが、一度かかるとそれぞれに免疫ができて2度とかからないものの(終生免疫が得られる)、異なったウイルスが原因で再び同じ症状の手足口病を発症して、2回、3回と繰り返すことがあります。成人では幼少時に、かかっても症状が現れない「不顕(ふけん)性感染」を受けていることが多いため手足口病を発症することはあまり多くありません。
3.手足口病が発生しやすい時期
 流行のピークは夏季(6月〜9月)ですが、最近では秋から冬にかけても発生していることが報告されています。
4.手足口病(図1 手足口病における水泡性発疹)
 手足口病は3日〜6日の潜伏期の後、手や足、時には臀部(でんぶ)(おしり)に水泡が出現します。同じ時期に口内炎も出現します。この口内炎は口腔内全体に見られることが多く、水泡から深い潰瘍を形成するものまでさまざまですが1週間程度で治ります。また微熱をともなうことがありますが、通常は2〜3日で解熱します。手足口病の好発年齢は5歳以下が90%で、特に1〜3歳がピークとされています。
5.手足口病の感染経路
 ヒトからヒトへの感染は主に咽頭部(のど)の分泌物に含まれるウイルスの飛沫(ひまつ)感染(空気感染)や便から排泄されるウイルスの経口感染、水泡内容物からの接触感染によって起こります。エンテロウイルスの特徴として、おもな症状が消失した後も3〜4週間は糞便中に排泄されるため、うがいや手洗いを十分に行うように指導しましょう。しかしながら、手足口病で発疹が出ている時期でもほかの乳幼児への感染のみを懸念して保育所や学校への登園、登校を停止しても効果は期待できません。流行阻止の目的よりも患者自身の熱や口腔内の痛みなどの病状によって登園、登校の可否を決定すればよいと考えられます。2003年に更新された感染症法改正にともない手足口病は5類感染症に分類され、学校で予防すべき伝染病1種〜3種に含まれていません。
6.手足口病の合併症
 手足口病は基本的には自然に回復する病気であり、重症な合併症をともなうことは極めて少ないと考えられています。しかしながら、1997年マレーシア東部のサラワク州(ボルネオ島)で小児の間で手足口病が大流行し幼児が30人死亡、1997年大阪で手足口病によると考えられる3人の小児の急死、1998年台湾でも幼児の死亡例が報告されています。いずれも原因ウイルスとしてエンテルウイルス71EV71)が考えられており、このウイルスの感染により脳炎や髄膜炎を発症したことが死因となったようです。したがって、手足口病の経過中にたびたび吐いたり、頭痛を訴えるときには注意が必要です。このようにエンテルウイルス71EV71)の感染では脳炎や髄膜炎を、またコクサッキーA16型ウイルスでは心筋炎を合併する頻度が高いことが知られています。
7.手足口病の予防
 手足口病には有効なワクチンはありません。したがって、特に排泄物を処理するときは手洗いを励行し、ヒトからヒトへの感染を防ぎましょう。
                 医療法人 将優会クリニックうしたに
                    理事長・院長 牛谷義秀
        

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