ー ヘリカルCT検査 ー
 一般的に肺がん検診では、ほとんどが胸部(肺)単純X線検査です。しかしながら通常のX線検査では病変を確認することがむつかしく、発見された場合にはすでに進行がんで手遅れといったケースも少なくありませんでした。最近ではCT、特にヘリカルCTによる撮影で肺がんの早期発見が可能となり、治療後の長期生存率も以前に比べると飛躍的によくなりました。

1.上位死亡者数と原因

 わが国の上位死亡者数は第1位が悪性新生物(癌)であり、第2位心疾患、第3位脳血管疾患(脳卒中)の順であり、それぞれ年間約30万人、15万人、13万人となっています。悪性新生物の中でも肺がんは増加し続け、がんによって亡くなる方の第1位の原因です。年間約68000人の人が肺がんになり、約55000人の人が肺がんで亡くなっています。2000年には実に年間死亡者の18人に1人が肺がんで亡くなっている計算になるから驚きです。肺がんの重要因子のひとつは喫煙であることは疑いのないところですが、喫煙量が多ければ多いほど、また喫煙の開始年齢が若いほど肺がん発生の危険が高いといわれています。また喫煙の影響は長期間残ることもわかっており、喫煙指数(=1日の本数×年数)が600をこえる人は要注意です。
 このように毎年増え続ける肺がんですが、早期発見・早期治療ができれば、かなりの確率で助かる時代となってきました。人間ドッグによる早期発見が啓蒙されていますが、これまで行われてきた胸部X線検査や喀痰細胞診(痰の中にがん細胞がいないかを調べる検査)では限界があることがわかってきました。人間ドッグの肺検診にヘリカルCT検査を取り入れた結果、早期の段階での発見率が約40%から80%に倍増し、発見時の腫瘍の大きさもかなり小さくなった、との報告もあります。

2.CT検査の歴史

 CTの正式名称はコンピューテッドトモグラフィー[Computed Tomography]であり、X線装置とコンピューターを組み合わせた医療機器(図1)のことです。X線を360度回転させながら照射して人体の横断面を撮影、各方向からの像をコンピューターで処理して、その平面の像を得るという器械で「コンピューター断層撮影装置」と呼ばれています。
 1973年にイギリスで開発されたX線診断装置で、当時脳腫瘍などの診断が困難であった時代に、このCTが普及し診断、治療の場で大いなる手助けとなりました。当時はX線ビームが一周し、ひとつの断層面を画像にするため、ひとつの画像ごとに息を止めて撮影する操作を繰り返す必要がありました。たとえば30cmの長さの肺の人を撮影するのに1cmごとに30回息を止めて撮影するわけですから、30分ほどかかっていました(図2)。
 1989
年にヘリカルCT[スパイラル(らせん)CTともいう](図3)が登場しました。このヘリカルCTの最大の特徴はX線をらせん状に照射させながら撮影するため、1回の息止めで途切れなく人体を撮影することで見落としのない連続的な画像が得られ、撮影時間の短縮と撮影範囲の拡大、さらには被爆線量を少なくするのに大きく貢献しました。
 また1998年にマルチスライスCTが登場しました。1回転で1枚の断層画像の撮影しかできなかったヘリカルCTに対して、1度に複数枚の断層画像を撮影することが可能となったマルチスライスCT検査は薄い厚さで広い範囲の臓器を輪切りにして短時間に撮影できるようになりました。マルチスライスCTは動いている心臓の断層撮影も可能となり、心臓自身を栄養している血管(冠動脈)を動画として映し出すことができます(図4)。これまで心筋梗塞後の血管の状態を把握するのに大腿動脈などからカテーテルを挿入して行う血管造影検査しかありませんでしたが、マルチスライスCTの登場により患者の負担が軽減することになりました。マルチスライスCTは優れたCTですが、まだまだ普及するのに時間がかかりそうです。


図1 
CT検査装置



図2 従来のCT



図3 ヘリカルCT
3.ヘリカルCT検査
 X線管が連続回転している中を、検査を受ける人が乗ったテーブルが連続的に移動するようになっています。このためX線ビームがテーブル上の人体に対してらせん状に連続してスキャンします。従来は30分以上かかっていたCT検査もこのヘリカルCT検査の登場により、およそ5分程度の短い時間で検査が終了できるようになりました。X線が短時間に高速回転するため、1回の息止めで広範囲の撮影ができ息止めがむつかしい方にも安心して楽に検査ができるようになり、きれいな画像を提供できるようになりました。この高速回転により撮影されたヘリカルCTの横断像をもとに3次元画像(図5)を組み立てることができ、検査を受けた方にとって非常に理解しやすくなりました。
4. 肺がん検診にヘリカルCTが有効な理由
 胸部X線検査では20mm以下の肺がんは検出されにくく、早期がんの発見はきわめて困難であるといわれています。胸部X線検査で20mmの肺がんが見つかった時には約20〜30%に転移があるともいわれています。肺がんには大きく分けて2つのタイプがあります。1つは気管や気管支などにできる中枢(ちゅうすう)型肺がんです。この中枢型肺がんは胸部X線検査での発見率は低く、見落とされることも少なくありません。咳(せき)血痰(けったん)などの症状がわりと早い時期に現れるため、胸部X線検査に加えて痰の中にがん細胞が含まれていないかを調べる喀痰細胞診が絶対に必要な検査と考えられています。これに対して中心から離れた箇所にできるのが末梢野型(まっしょうはいやがた)肺がん(図5)と呼ばれていますが、咳や血痰などの症状がなかなか現れないため、病院を受診する機会が遅れがちとなります。もちろん検査部位をらせん状にスキャンするヘリカルCTはあらゆる部位の検査に有用ですが、従来の胸部X線検査では隠れて見にくい心臓や肋骨などの影に隠れた病変も見つけることができます。また末梢肺野型肺がんの発見にはヘリカルCT検査が最も信頼性が高いと考えられています。ヘリカルCT検査の登場により、胸部X線検査では見つけにくい10mm以下の肺がん(図6)でも容易に発見できるため、早期の段階で治療ができることとなり肺がんからの生還率が大幅に高くなってきました。
また発見された病変がどのような性質のものか?の判断を行うための次のステップの検査として高解像度CT検査(図7)があります。これは10mm間隔で撮影した画像で発見された部位を焦点に、さらに2〜3mm間隔で撮影するもので専門医が読影すると、病変が良性か悪性か?の判断や、どんな疾患かの診断がある程度可能となります。
5.MRI検査との比較
病気が始まったばかりの脳内出血、クモ膜下出血のほか、ほとんどすべての肺の病気はCT検査が圧倒的に有効と考えられています。一方で、MRI検査は脊椎や関節、軟部組織のほか、クモ膜下出血の原因となる脳動脈瘤の発見には優れているといわれていますが、少なくとも30分程度の検査時間がかかっているのが現実です。
6.どのくらいの頻度で検査すべきか?
肺野型肺がんの中には半年、1年単位で急激に大きくなる扁平上皮がんというタイプの肺がんも報告されており、確実を期するために年に2回の検診をすすめている報告もあります。
7.最後に
咳が出る、声がかすれる、胸が痛い、息切れがするなどの症状は肺がんの危険信号かもしれません。タバコを吸われる方、同居者にタバコを吸う人がいる方、ご家族に肺がんになった方がいらっしゃる方など、“もしかしたら”の不安がある方は、すぐに一般のCTよりもさらに診断能力の高いヘリカルCTを備えている医療機関を受診してみてはいかがでしょうか?

図4 マルチスライスCT
胆のうの立体像が見れます
図5 ヘリカルCTによる3次元画像
(胆のうと腰椎の関係)
画像をクリックすると胆のうの立体像が見れます

図6 肺野型肺がん

図6 ヘリカルCT
( 当院で経験した7mmの肺野型肺がん )

図7 高解像度CT

医療法人将優会 クリニックうしたに  
理事長・院長 牛谷義秀