最近話題の「メタボリック・シンドローム」

 職場検診で「血糖値がやや高い、血圧が少し高め。」と初めて言われたり、「最近おなかが出て、これまでのズボンではウエストがきつくなった。」などという経験をしておられませんか?検診の結果、血圧や血糖、血中脂質の値が「要注意」と指摘されながら、明らかに正常値を超えていないため、「この程度ならだいじょうぶ」と再検査しないで放置していませんか?

1.メタボリック・シンドローム(メタボリック症候群)とは?

 高血圧や高脂血症、糖尿病のそれぞれの数値が少し正常域を超える程度(境界型糖尿病、境界域高血圧など)でも、これらの危険因子が重なると動脈硬化は急激に進行し、脳卒中や心筋梗塞などの致命的な病気がもたらされます。これはメタボリック・シンドロームと呼ばれ、世界的に注目を集めています。「メタボリック」とはもともと英語で「代謝」という意味です。

2.動脈硬化の原因は死の四重奏!

 糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満はそれぞれ単独でも動脈硬化の原因として注目されており、死の四重奏と呼ばれています。動脈硬化の予備群と考えられるこれらの危険因子をもつ人は日本全国でかなりの人数にのぼります(表1)。実はそれぞれの危険因子が軽度であっても勢ぞろいするとかなり深刻な病状へと進行します。糖尿病、高血圧、高脂血症は明らかな異常値を示す値がひとつでも見つかり、再検査を指摘されると病院に足を運びますが、肥満だからと言って病院を訪ねる人は少ないでしょう。ところがこの肥満、とくに内臓脂肪が原因の肥満では体内に蓄積した脂肪が血糖値を下げる作用のインスリンの働きが悪い状態「インスリン抵抗性」という状態をひき起こすと考えられています。また肥満になると高血圧になる確率は2〜3倍に上昇し、逆に5kgの減量で血圧は10mmHg下がるともいわれています。結果的に血糖値が上昇するばかりか、血圧や中性脂肪が上昇し、「善玉コレステロール」と呼ばれるHDLコレステロールが低下してしまいます。メタボリック・シンドロームの人が糖尿病を発症するリスクは通常の7〜9倍、心筋梗塞や脳卒中を発症する危険は約3倍になると言われています。

3.検査値をどのように解釈するか?

検査値が「少し高め」、「境界域」で再検査などの指示を受けたときにはすでにメタボリック・シンドロームが始まっており、動脈硬化を進行させないようにエネルギー制限と運動不足の解消に真剣に取り込む黄信号と考えなければなりません。メタボリック・シンドロームの危険因子と考えられている血圧、血糖、脂質、腹囲(内臓脂肪)のそれぞれの異常値を表2にまとめてみました。表内に示された高血圧値、空腹時血糖値、中性脂肪高値、HDL‐コレステロール(いわゆる善玉コレステロール)低値、内臓脂肪の基準値のうち3項目以上を満たす場合をメタボリック・シンドロームと定義しており、心筋梗塞や脳卒中の危険度が高まってきます。

4.エネルギー制限と運動不足の解消

メタボリック・シンドロームから回復するためには食事療法によるエネルギー制限と運動不足解消による肥満の改善をはかる必要があります。肥満の目安となるのが、BMI【体重kg÷身長(m)÷身長(m)】や皮下脂肪のほか、表2に示した腹囲です。ある程度の年齢を超えて気になるのがおなかの脂肪です。なかでも知らず知らずのうちに蓄積される内臓脂肪は大きな問題です。脂っこい食事ばかりが問題なのではなく、甘いものやアルコールなどカロリーの取りすぎが内臓脂肪の大きな原因です。もちろん摂取したエネルギーに見合う運動ができていれば内臓脂肪はあまり大きな問題とはなりません。
 運動不足の解消にはウォーキングや水泳など無理なく、しかも楽しみながら長くできる有酸素運動を続けることが大切です。有酸素運動については昨年も話したところですが、簡単にまとめると「脂肪を燃焼させるためには多少汗ばむ程度の運動を30分以上にわたり、1週間に3回以上続けること」が大切です。

5.おわりに

 食生活を共にする夫婦は不思議なほど体型が似ているのに気づかれませんか?メタボリック・シンドロームの治療は高カロリー・高脂肪食によるエネルギー過剰摂取を抑える食事療法と運動療法を中心に生活習慣病の改善に取り組むことが大切です。生活習慣病が引き金となってドミノ式に心不全や失明、透析、脳卒中などの重篤な疾患になってしまう「メタボリックドミノ」(図1)という考え方を京都大学の伊藤裕先生が示されています。あなたは生活習慣の乱れからおこるメタボリック・シンドロームのドミノの真っ只中にいませんか?
 日本人の高齢化と食生活の欧米化により、メタボリック・シンドロームは今後ますますは増加してくるものと考えられます。血圧や肥満が気になる方はできるだけ早くかかりつけ医に相談しましょう。

1 動脈硬化の予備群

高血圧症

3500万人

糖尿病

740万人

高脂血症

600万人

肥満

2300万人

 

表2 メタボリック・シンドロームで注意したいデータ

 血圧

収縮期血圧  130mmHg以上
 または拡張期血圧   85 mmHg以上

空腹時血糖

110mgdL以上


 脂質

 中性脂肪

150mgdL以上

HDL‐コレステロール

40mgdL未満


 腹囲

(内臓脂肪)

 男性

 85cm以上

 女性

 90cm以上


1 メタボリックドミノ

                         京都大学 伊藤 裕先生

社団法人宮崎県トラック協会