便秘の神秘
 女性の方々には日頃、便秘で悩んでいらっしゃる方が意外に多いようです。つらくても友人にさえなかなか打ち明けられないでいる方も多いと聞きます。
 私たちが食べたものは食道から肛門にいたる約9mの間、消化・吸収を経て最後に便として排泄されます。排便の回数や量などの排便習慣は個人差が大きいため、明確に定義することは困難ですが、一般には「便が大腸内に長時間停滞し、排便が順調に行われない状態」と考えられています。

1.便はどのようにして生成されるのか? (図1

 食物は食道から胃→十二指腸→小腸→盲腸→結腸→直腸→肛門と消化・吸収されながら肛門に到達します。胃に届いた食物はペプシンという酵素を含む胃液によって消化され、十二指腸では胆汁・膵液によって吸収されやすい形に分解されます。小腸では栄養素と水分が吸収され、残ったものから便が生成されます。大腸では水分の吸収と腸内細菌による発酵が8〜14時間かけて行われ、最終的に残った内容物に古くなった腸の粘膜や腸内細菌の残骸が加わり、便となっていきます。したがって、大腸では水分の吸収が主たる役割なので便が長時間大腸内にあれば水分はどんどん吸収され便は硬くなってしまいます。

2.排便のメカニズム

 直腸に送られた便が直腸の壁を進展させます。直腸に便が下りて圧力が高まったという刺激が大脳に伝わると排便反射が起こり、肛門括約筋が緩みます。腹圧といきみによって便は押し出され、肛門が開いて排便が始まります。自律神経(交感神経と副交感神経)がうまくバランスをとりながら排便が行われるようになっています。

3.便秘の分類

 便秘はいろいろな原因でおこります。便秘は大きくは次のように分類されます。

1)器質性便秘:解剖学的異常やがん、手術後の癒着などにより腸管の壁が圧迫されたり、腸管の内腔がふさがれてしまうためにおこります。

2) 機能性便秘:
 @一過性単純便秘:旅行先での食生活や生活環境の変化で便秘になったり、受験前のストレスなどの精神的要因などでおこる便秘のことで急激におこるものの、一時的なものです。

 A常習性便秘:運動不足の人や長期間にわたり寝込んでしまいがちな老人、食事をとる量が極端に低下したためにおこる「結腸性便秘」、腹部の手術などで直腸内に便が下りても便意を生じないためにおこる「直腸性便秘」、腸管の運動が激しくなって痙攣性の収縮のために糞便が小さく硬くなってしまう「痙攣性便秘」に分けることができます。

 B薬物性便秘:薬剤によってはその副作用のために便秘を生じてしまうものがあります。皆さんが内服している薬剤に便秘しやすいものはないか、見直してみてはいかがですか?便秘を生じやすい代表的な薬剤を表1に示しました。

4.便秘を治す薬剤

 便秘の治療薬にはさまざまな種類があります。便秘治療薬として大切なことは「糞便中の水分増加」と「腸管運動の亢進」のバランスです。

1)機械的下剤
 @浸透圧性下剤:腸管内液の浸透圧を高めて腸管内への水分移行を促し、便の水分量を増加させる
 A膨張性下剤:腸内で多量の水分を吸収し糞便量を増やして自然な排便を促す
 B浸潤性下剤:界面活性作用によって便の表面張力を低下させ、便中への水分の浸透を容易にして便をやわらかくする

2)刺激性下剤

 小腸、大腸の運動を促し、水分の分泌を促す作用をもつ薬剤で次の2剤に分けられます。
 @小腸刺激性下剤
 A大腸刺激性下剤

3)消化管運動調整薬


4)自律神経作用薬

5)そのほか
 プロスタグランジン、消化管内ガス駆除薬、ビタミンB剤、漢方薬(大建中湯、大黄)、複合剤、坐薬、浣腸などがあげられます。

5.食事の工夫

 便秘の人に対する腹部のマッサージは自律神経に支配されている腸の動きに有効と考えられています。交感神経の緊張をゆるめ、副交感神経に刺激を与える腹部マッサージは血液循環を改善し、リラックスさせるという効果があります。両手を重ねながら、ゆっくりと時計回りに「の」の字を描く(図3)マッサージは有名です。また、しつこい便秘には腹部や腰部を蒸しタオルなどで暖める「温庵法」やツボ刺激も効果があるといわれています。

7.おわりに

 便秘は不快なものです。便秘の成因を理解し、便秘にならないためのセルフケアに努めましょう。万が一、便秘に悩まされるようになったら自分にあった便秘解消法をできるだけ早く探し求め、快適な生活を送りましょう。

1 便秘をひき起こしやすい薬剤

 1.オピオイド
 2.三環系抗うつ薬
 3.フェノチアジン系
 4.抗コリン作用薬
 5.制酸薬(アルミニウム化合薬、カルシウム化合薬)
 6.クロルジアゼピン系薬
 7.抗パーキンソン薬
 8.降圧薬



十二指腸            (4時間)

    小腸(79時間)  直腸   肛門  大腸(2530時間)                        

   
1 消化・吸収・排泄に要する時間




図2 便秘解消のための食事の工夫


図3 腹部マッサージ(両手を重ねてゆっくりと時計回りに波打つように「の」の字を描く)