『VDT症候群(別名テクノストレス眼症)』

 日本におけるインターネット人口は1300万人を超えるといわれています。今や、パソコンなどは私たちの日常生活や職場に欠かせないものとなっています。またパソコン以外にもワープロや子供たちの間でも大流行しているテレビゲームなど、私たちの身のまわりにはVDTVisual Display Terminal)がいっぱいです。最近、パソコンなどのVDT作業に携わる人の間で眼精疲労などを訴える患者が激増しており、このようなVDT作業を続けている人の60%以上が目の疲れやイライラなどのテクノストレスに悩んでいるといわれています。
 今回のテーマはVDT作業を続けている人たちの健康管理が必要と考えられ始めたVDT症候群です。

1.VDT症候群の原因

 ディスプレイ、キーボードなどにより構成されるVDT機器を使って、データの入力や検索を行ったり、文章や画像などを作成・編集したり、プログラミングやその監視などを行う作業をVDT作業と呼んでいます。VDT作業を続けている人たちの視覚障害はVDT症候群と呼ばれ、10年ほど前から大きな社会問題となってきています。
 VDT症候群の原因は@私たちの視線がディスプレイ、キーボードおよび書類の3箇所を常に移動するので目が疲れやすいこと、A集中してディスプレイを見るのでまばたきが減り、その結果目が乾きやすくなること、B同じ姿勢を長時間とってしまいがちなため首、肩、腕、腰などの痛みをともなってしまうこと、などにあるといわれています。実際には長時間作業のほか、ディスプレイの文字が明るすぎた場合やイスが高すぎたり低すぎたり、ディスプレイの位置が高すぎて上まぶたがいつもより大きく開いてしまうため目が乾きドライアイとなってしまったり、天井照明や窓などの映り込みが画面上にあって見にくいなどの身近な環境条件に左右されることが大きいのです。

2VDT症候群の症状

VDT症候群はおもに@視覚負担症候群 A筋骨格系負担症候群 B精神神経負担症候群の三つに分類できます。視覚負担症候群は疲れ目、かすみ目、視力低下などの目の症状がおもなものです。筋骨格系負担症候群ではからだ全体のこり痛みがみられ、深刻になるにつれて食思不振、胃痛、便秘、イライラ、抑うつなどの精神神経負担症状がみられるようになります。

3.作業環境の整備・管理

 作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるように作業環境を整備する必要があります。VDT作業に適した照明および採光の調整、騒音の低減措置などを行うとともに作業時間(一日の作業時間、一連続作業時間および作業休止時間)の管理や作業の特性や個々の作業者の特性に応じたVDT機器(キーボード、マウス、テンキーなどを含む)の整備も必要となります。移動しやすく適切な高さに調整できる安定したイスであること、また作業者に合った高さや広さの机や作業台であること、作業者の脚の周囲の空間は作業中に脚が窮屈でないことなども大事な要件です

4.VDT作業中の注意点

VDT作業中の注意点を以下にあげました。

 1)目に対する負担軽減のために
  @適度の休憩:1時間に1015分は休憩をとり、遠くを眺める。
 A体操:身体を動かし、緊張をほぐす。目の乾き対処のため目薬をつける。
 Bメガネは度の合ったものにする。
 Cドライアイや緑内障の人は注意が必要である。
 D降圧剤などの内服や糖尿病などでドライアイになりやすいので目薬を使う。

 目はまばたきによって涙が送られて潤い、酸素や栄養分が補給されます。画面を注視するVDT作業ではまばたきが減り、ドライアイになりやすくなります。意識してまばたきを増やし、室内にはぬれタオルをかけたり加湿器を置いたりなどのほか、直接エアコンの風にあたらないなどの工夫により、できるだけ眼精疲労を回避する必要があります。

 2)VDT作業中の姿勢について(図1参照)
 @首を少し前傾姿勢で。
 A肘をほぼ90度に。
 B両腕はほぼ水平に。
 C大腿の高さを水平に。
 D下肢は直角で足裏全体が床に接した姿勢。
 E画面の上端は目の位置より下にする。
 F画面と目の距離を4050cm程度にする。

 VDT作業中の姿勢は作業者にとって安楽な姿勢であり、かつ作業効率が上がる姿勢であることが望まれます。画面も作業者にとって好ましい位置、角度、明るさなどに調整でき、表示される文字の大きさは小さすぎないように概ね3mm以上とするなどの配慮が必要です。

5.VDT作業における健康管理

 VDT作業に従事することが多い作業者は健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、通常の定期健診に加えて次の検査を受けることが望まれます。

            VDT作業における健康検診

  A.   業務歴の調査

  B.   既往歴の調査

  C.   自覚症状の有無の調査
    (a) 眼疲労を主とする視器に関する症状
    (b) 上肢、頸肩腕部および腰背部を主とする筋骨格系の症状
    (c) ストレスに関する症状

  D. 眼科学的検査
    (a) 視力検査(@:5m視力の検査  A:近見視力の検査)
    (b)
 屈折検査
    (c) 眼位検査
    (d) 調節機能検査:近点距離の測定により調節機能を測定する

  E. 筋骨格系に関する検査
    (a) 上肢の運動機能、圧痛点等の検査
    (b) その他医師が必要と認める検査

 職場ではVDTに関する健康相談窓口を設け、職場体操などを取り入れてストレッチ、リラクゼーションを行うことが大切となってまいりましょう。またVDT作業者は自主的に健康を維持管理し、かつ増進していくために必要な知識を取り入れ、教育を受けることが望ましいと考えられます。



1 理想的な作業環境
照明・採光:光源が作業者の視野に入らないよ
うに、また太陽光線がディスプレイに入らないよ
うにする。

◆作業面照度:ディスプレイは500ルクス以下、
書類・キーボード面は
300ルクス以上。

◆ディスプレイに照明器具や窓などが映りこまな
いようにする。
◆室内と手元の明るさの差がなるべく小さくなる
ように見やすい明るさにする。
◆キーボードは文字が明瞭で読みやすく、ディス
プレイから離して使える。

◆手の大きさにあったマウスでカーソルの速さや
ダブルクリックの間隔は自分に使いやすい設定と
する。
◆プリンターなどの不快な騒音は防止する。

◆作業姿勢
 1)背もたれに背を十分にあてる。
 2)イスに深く腰かける。
 3)足の裏全体が床につく。