『関節リウマチ』

関節リウマチは日常生活、社会活動に支障をきたす最大の病気といわれています。関節リウマチは関節が主な病巣であるため、関節局所の炎症性疾患と誤解されがちです。関節リウマチは骨・軟骨・関節のほか、これらの周辺にあって運動に関係する筋肉、腱(ケン)、靭帯(ジンタイ)などの軟部組織などに痛みを発症する疾患の総称であるリウマチ性疾患の中で最も代表的な疾患です。しかしながら、実際には全身症状をともなう慢性的で進行性の病気であり、関節炎の経過はよくなったり、悪化したりを繰り返しながら、ゆっくりと軟骨や骨を破壊しながら進行し、次第に関節が伸びたまま曲がりにくくなる、などの後遺症を残して日常生活が著しくそこなわれてしまうことになります

1.慢性関節リウマチの診断

関節リウマチの患者は国内に推定50〜70万人いるといわれています。40歳代の女性を中心に発症し、ゆっくりと運動機能がそこなわれていきます。完全に治すことはなかなか困難ですが、かかりつけ医、専門医や理学療法士、ソーシャルワーカーなど一丸となって支えるケアにより、日常生活の改善や生活の質の向上が図られています。
関節リウマチに特有の症状や所見があるわけではありません。関節の痛みを訴えて受診されることが多いものの、関節以外にもさまざまな症状を訴えられることが多いため、診断に手間取ることもありますが、早急に治療を開始することにより健やかな余生を送ることが期待されています。外来では関節が痛いといって受診された患者も診察にあたった医師も、まずは関節リウマチを疑ってリウマトイド因子を計測して、陽性であれば関節リウマチ、陰性であればリウマチでないと単純に判断してしまうことが往々にしてあります。表1に示しますように、リウマトイド因子が陰性でもほかの項目が3項目以上満たされれば関節リウマチと診断されることもあります。

2.関節リウマチの症状

痛みの場所が関節に集中している関節型と関節以外にも症状が現れる非関節型の2種類に分類します。

(1)関節型

関節に集中した痛みは、自分で動かしたり(自動)、他者が動かす(他動)ことにより増強されます。関節痛ばかりでなく、関節の腫脹、局所の熱、発赤などをともなうことがあります。これらの関節の症状は1関節か・複数関節か?、ひざや肩などの大きな関節か・指などの小関節か?、左右対称か・非対称か?、急性か・慢性か?、痛みは一時的か・持続的か?、などの要素が今後の治療経過を左右することがあります。

(2)非関節型

非関節型では筋肉や腱、靭帯などに病変を生じます。関節リウマチの仲間に、筋肉痛や筋力低下などをひきおこす多発性筋炎、皮膚筋炎もあり、慎重に診察しなければなりません。

3.関節リウマチにともなう全身症状 や関節外症状

発熱、朝のこわばり、全身倦怠感、体重減少、貧血、リンパ節腫大、皮下結節などさまざまな症状が現れます。関節外の症状として、皮膚粘膜症状、筋肉症状、眼症状、指先の血流阻害による色調変化(レイノー現象)が見られるほか、腎臓・呼吸器・心臓・血管のほか小腸・大腸などの消化器にも種々の症状が現れるようになります。

4.関節リウマチの治療(表2

関節リウマチが、原因不明で多発性で慢性に経過する関節炎の総称であることは先にも述べましたが、単なる関節炎にとどまるだけでなく肺、消化管、眼、腎臓、皮膚や神経などに炎症症状をおこすことがあるので、全身の観察が重要です。
関節リウマチの治療の4本柱は、1)日常生活で行う基礎療法、2)リハビリテーション、3)薬物療法、4)手術療法です。どのひとつが欠けても治療はうまくいきません。関節リウマチの治療は薬物治療がその中心となりますが、基礎療法やリハビリテーション、手術治療を含めた総合的治療が必要となります。
1)日常生活で行う基礎療法
局部の安静や保温、適度の運動が必要です。

2)リハビリテーション

関節リウマチは早期に発見され治療されることが大切ですが、とくに痛みのある箇所の機能障害をあらかじめ予測し、予防的に取り組むことも重要です。関節リウマチは@全身の炎症性疾患であること、Aよくなったり悪くなったりを繰り返すこと、さらにB完治させることは困難であることなどを患者さんに十分理解してもらうことが大切となります。痛みのある関節の可動域(動かせる範囲)を拡大する訓練や、筋力強化訓練、姿勢の悪さから生じる関節や筋肉への負担を軽くする姿勢矯正が大切となってきます。また、温熱療法、電気療法などや関節の支持性を高めるために装具を使った装具療法なども積極的に取り組むとよいでしょう。

3)薬物療法

炎症をしずめて、痛みを軽くする治療法と免疫異常をなおして炎症を軽くする治療法の2つに分類されます。具体的には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が治療の主体になりますが、病状によってはステロイド薬を使用することがあります。また、免疫異常に対しては抗リウマチ薬(DMARDs)、免疫抑制剤を使用することがあります。
(1)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs
炎症をしずめて痛みを軽くする目的で使用されます。消炎鎮痛作用は速くて使いやすいなどの理由で、まずこの種類の薬が使われます。しかしながら関節リウマチの根本的な治療薬でなく、最近では胃腸障害や腎臓障害などの副作用が問題視されるようになってきました。

(2)抗リウマチ薬(DMARDs
この薬は免疫異常をなおす目的で使用されます。ただし、炎症を直接なおす作用はなく、しかも効果が現れるまでに時間がかかるため、治療開始の際は先に述べた非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイドといっしょに内服してもらいます。抗リウマチ薬(DMARDs)には注射用金剤、サラゾスルファピリジンなどがあり、治療効果は高く約6割の患者に有効とされています。ところが、これらの薬にも肝臓障害・血液障害などの副作用が現れるため注意を払う必要があります。また抗リウマチ薬(DMARDs)が無効な場合はメソトレキセートが奨励されていますが、口内炎や肝臓障害のほか間質性肺炎、骨髄抑制による白血球減少症などの重い副作用もあり慎重な経過観察が必要です。

(3)ステロイド
関節リウマチの活動性が強い時や抗リウマチ薬(DMARDs)の効果が現れるまでの時期に限って使用されます。ステロイドは長期にわたり使用し続けると、骨粗しょう症や胃潰瘍、糖尿病、高血圧などの副作用をともなうことがあるので慎重に投与されるべきです。

(4)関節リウマチの補助治療
関節リウマチの患者の多くは中高年女性であり、骨粗しょう症を併発していることが多いため、カルシウム剤やビタミン製剤など骨粗しょう症の治療も併用した方が治療効果が高まると考えられています。

(5)生物製剤

最近注目をあびている関節リウマチ治療薬として生物製剤をあげることができます。関節リウマチの患者では関節組織を破壊すると考えられている「サイトカイン」という物質が多数存在することがわかっており、この物質を制御する「抗サイトカイン治療」が有効と考えられています。生物製剤が明らかな治療効果を持っていることはすでに確認されていますが、副作用と費用の問題から一般的な治療法として普及するには至っていません。

4)手術療法

関節リウマチ患者が日常生活でどれほどの障害を受けているのかを具体的に把握して今後の方針が決定されます。たとえば階段の昇り降りができるか、食物が口までうまく運べるか、シャツのボタンははめられるか、などの日常生活動作が把握される必要があります。これらの日常生活動作がリハビリテーションや薬物治療で改善されない場合に手術療法が選択されることになります。したがって手術の目的は痛みがとれて、関節の機能が回復し、日常生活に支障がなくなると同時に生活の質が改善することにあるといえましょう。
 手術は、a)関節の破壊を防止し痛みを軽減させる滑膜切除術と、b)関節の機能を回復させる機能再建術の2種類に分類されます。機能再建術では人工関節を用いた人工膝関節置換術と人工股関節置換術が有名です。

5.最後に

いまだに原因が不明であり、また完治するような治療法もなく、また予防法が確立されておらず、さらに社会の認識も十分でなく差別が存在することも事実です。機能障害の程度に応じた家屋の改修、仕事内容や周辺環境(温度や湿度を含む)への配慮が必要となります。また関節リウマチはその時々で活動度が変化するため、身体的・精神的・社会的・経済的なハンディキャップを十分理解し、残された能力を最大限回復させてあげることが重要です。

    1 早期関節リウマチの診断基準(日本リウマチ学会)

          
1.3関節以上の圧痛または他動運動痛

2.2関節以上の腫脹

3.朝のこわばり

4.リウマトイド結節

5.赤沈20mm以上の高値またはCRP陽性

6.リウマトイド因子陽性

以上6項目中、3項目以上を満たすもの。

         2 関節リウマチの治療方法

1)基礎療法
  安静(全身・局所・精神)・運動・温熱・栄養・教育(患者・家族・周辺)

2)リハビリテーション
 1.運動療法
 2.水治療法
 3.温熱療法

 4.電気・光線療法
 5.マッサージおよび用手療法
 6.機械的療法・・牽引療法など

3)薬物療法
 1.非ステロイド系抗炎症剤
 2.ステロイド剤
 3.免疫調整剤
 4.免疫抑制剤
 5.ビタミン・精神安定剤・筋弛緩剤

4)整形外科的療法 
 1.補装具
 2.滑膜切除
 3.機能再建術

5)食事療法

6)精神療法

7)その他の療法
 1.血漿交換
 2.白血球(リンパ球)除去

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