『脂肪肝と肝硬変』

健康に対する関心の高まりとともに検診や人間ドッグなどの予防医学も盛んとなり、「脂肪肝」という診断名を目にする機会が多くなりました。脂肪肝の主な原因はアルコールの飲み過ぎや栄養の取り過ぎと考えられてきました。私たちが食べた炭水化物や脂肪分は、中性脂肪となって身体活動のエネルギー源として使われますが、これらを取り過ぎてしまうと余分な中性脂肪が肝臓に蓄えられ、脂肪肝となってしまいます。最近、この脂肪肝の一部が脂肪性肝炎を経て肝硬変へと進行することが明らかとなり、進行具合によってはあまり猶予できないケースがあることもわかってきました。

1.脂肪肝とは?

一般に脂肪肝は病気としての認識がなく比較的安全なものと考えられてきました。また、これまで脂肪肝のほとんどがアルコールに原因があると考えられてきました。しかしながらアルコール摂取歴がない人、すなわちアルコールをほとんど飲んだことがない人にも脂肪肝が発生し、アルコール性肝障害に類似した所見を示すことが明らかになりました。脂肪肝とは中性脂肪が肝細胞に病的に蓄積した状態を指しますが、アルコールと関係がない脂肪性肝炎を非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic  SteatoHepatitis:NASH)と呼んでいます。わかりやすく言いますと、飲酒によって脂肪肝から肝硬変へと進行する肝炎と病態や症状の経過がよく似ているものの、アルコールとは無関係におきてしまう病気ということになります。先頃、京都大学病院で生体肝移植のドナー(提供者)となった40歳代の女性が肝臓の一部を子供さんに提供する手術を受けたあと、肝機能障害が発生し5ヵ月後にドミノ式肝移植手術を受けたものの、重症の肝不全から多臓器不全を併発し死亡されたことが報道されましたが、実は女性が単なる脂肪肝でなく肝臓提供者としては適さない非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であったことが明らかとなり、大きな話題となりました.

2.どうして非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は発生するのか?

脂肪、とくに脂肪酸や中性脂肪が肝臓へ蓄積した段階で、肝臓が外界からの刺激に反応しやすくなり、さらに肝臓の細胞がこわれて肝炎へと進行し、悪化してしまうと考えられています。

3.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の症状

ほとんどは無症状であり、一般的な肝臓疾患と同じように全身倦怠感や右わき腹の痛みやみぞおちの痛み、肝臓の腫れなどが一部の患者にみられます。

4.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の誘引

非アルコール性脂肪性肝炎を引き起こす原因として、高脂血症のほか肥満、糖尿病が注目されています。ライフスタイルの欧米化にともない、これらの患者数は増加しており、中でも糖尿病患者数は爆発的に増えています。したがって今後、非アルコール性脂肪性肝炎の患者数が年毎に増加するのではないかとの懸念があります。また高カロリー輸液を必要とする患者や外科手術後の患者もこの非アルコール性脂肪性肝炎の危険にさらされる懸念があり、注意が必要です。

5.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断

非アルコール性脂肪性肝炎はその名のとおり、アルコールの摂取がないこと
(アルコール摂取量20g/日以下)が前提で、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎など原因が明らかな肝炎は除く必要があります。さらに血液検査で半年以上にわたり血清ALT(GPT)が異常値を示し、腹部超音波検査や腹部CT検査で脂肪肝と診断されれば非アルコール性脂肪性肝炎と推測されますが、正確には肝臓に検査針を刺して組織検査を行う「肝生検」が最終診断となります。

6.治療

非アルコール性脂肪性肝炎の治療はその背景にある脂肪肝の原因を除去することにあります。誘引としてあげられる高脂血症や肥満、糖尿病はすべて食事療法と運動療法が主体で、必要に応じて服薬指導を行います。食べ過ぎ、飲み過ぎに基づいた生活習慣病が脂肪肝へと進行することが多きな原因で、これらを改善するための努力が大切といえます。適度の運動を行う一方で暴飲暴食、夜食は控えたいものです。

7. 最後に

アメリカでは非アルコール性脂肪性肝炎患者の20%が肝硬変へと進行し、さらには約8%が肝臓死に至っているといわれており、脂肪肝といえどもあなどれず、今後慎重な対応が必要と考えられます。