『不眠症』

「眠らなくては明日の仕事にさしつかえる」などと考えすぎて、逆にますます眠れなくなってしまったという経験をお持ちの方は多いことでしょう。睡眠障害に悩んでいる人は意外に多く、日本人の5人に1人はいるとも言われています。

1.睡眠時間は何時間必要か?

睡眠時間の長短には個人差があります。睡眠時間が短くてもすっきりと目が覚める人もいれば、かなりの睡眠時間をとってもぐっすり眠ったという満足感が得られないばかりか、昼間も睡魔に襲われる人もいます。睡眠は時間の長短よりも、その質が大切といえましょう。

2.不眠症にどうやって立ち向かうか?   

現代はストレス社会の時代とも言われています。この時期、就職、転勤、病気、転校、結婚など職場や学校、家庭などあらゆるところで大きなストレスが待ち受けています。一般的には「五月病」と言われ、急激な環境の変化についていけずに心身ともに疲労困ぱいすることが懸念されるこの時期、過度なストレスが原因となり不眠症を発症することがわかっています。ストレスの原因が明らかであれば、ストレスになる要因をいち早く取り除くことが大切です。
眠ろうと努力すればするほど、ますます眠れなくなるという悪循環は几帳面で神経質な人に多いとも言われています。眠ろうと意気込んで床につくとかえって眠れない場合が多いので、眠ることにこだわらず、リラックスできる音楽や映画で、気持ちを癒してからお休みのなるのも一つの方法です。

3.いろいろな不眠症のタイプ  

1)入眠障害
   ふとんに入ってもなかなか寝つけないタイプ

2)中途覚醒
   夜中に目が覚めて、その後は眠れないタイプ

3)熟眠障害
   ぐっすり眠れたという満足感がないタイプ

4)早朝覚醒
   朝早い時間に目覚めてしまい、以後寝つけないタイプ(高齢者に多い)

4.眠れないと「アルコール頼み」するのはよくない! 

不眠症は「文明化の証」の代償と言われるように、発展途上国よりも先進国に多く見受けられます。事実、先進国での平均睡眠時間は年々減少傾向にあり、経済の発展に代表される文明の進化とともに24時間型または昼夜逆転の日常生活を余儀なくされている現実があります。
眠れないときの対処方法として、先進国の中でも特に日本はアルコールに頼る傾向が最も強いといわれる一方で、不眠症に対する誤った認識のために一時的な寝不足ととらえ、医療機関の玄関をくぐることが最も少ない国ともいわれています。日本では古来より「晩酌や寝酒」がひとつの文化になっており、適度のアルコールは「百薬の長」と呼ばれ、健康にむしろ良好な結果をもたらしてくれることは以前に述べましたが、睡眠薬代わりに多量のアルコールを毎日繰り返し飲んでいるとアルコール依存症となって悪循環を招き、さらにはアルコール性肝炎から肝硬変になってしまいかねません。またアルコールで睡眠が得られてもアルコールの代謝分解が早いため、短時間で目覚めることが多く眠りも浅いといわれています。

5.不眠症と睡眠薬

「睡眠薬≒精神病」という誤った考え方や認識が普及し、今でも睡眠薬に対する抵抗感を持っている人が多いと聞きます。また、以前使われていたバルビツール酸系の睡眠薬は「依存性が強いため、一度飲むとやめられない」とまでいわれていましたが、最近では安全性が高く、習慣性が少ない睡眠薬が開発されています。さらに睡眠薬を長年にわたって飲み続けると「痴呆症」となってぼけてしまうと考えられることも多かったのですが、正しく服用している限り決してそのようなことはありません。
睡眠薬は規則的な睡眠のリズムをつくる上で欠かせないこともあります。ふだん眠れない分を週末や休暇で補おうとすることはかえって悪循環を招いてしまいますので、あまりおすすめできません。

6.睡眠薬の分類(表1 おもな睡眠薬)

睡眠薬は作用時間によって超短時間型、短時間型、中間型、長時間型の4つに分類され、さらに不眠症のタイプによって入眠障害、中途覚醒、熟眠障害および早朝覚醒のそれぞれにあった4種類の睡眠薬が使い分けられることになります。
睡眠薬によっては翌日に眠気や疲労感が残ってしまうものもあります。また、これまでの睡眠薬は筋肉の緊張をほぐす作用が少なからずあったため、高齢者では転倒骨折の危険があり投薬の量に注意する必要がありましたが、最近では副作用が軽減され、自然で良好な睡眠が得られるような新しい睡眠薬が開発されています。
 眠れないからと睡眠薬を求めて心療内科や精神科など特別な診療科に通う必要はありません。かかりつけの先生に相談するのが最もよいと考えられますが、一過性の不眠症ではなく、長期化して慢性化した場合には専門医を紹介してもらうとよいでしょう。

7.眠れるための工夫

1)寝る前にすすめられること
      ・心が落ち着く音楽や映画などでリラックス
    ・ぬるめのお風呂でゆっくりリラックス
    ・アロマテラピー(心地よい香り)でリラックス

 2)寝る前にひかえたいこと
     ・コーヒー、紅茶などカフェインを含むもの
    
・多量の寝酒
    
・タバコ
    
・ゲームや激しい運動

  3)眠れるための環境作り
    ・適度なかたさの敷布団
    ・汗を吸収し、保温性のある掛け布団
    ・頚椎のカーブが保てる枕
    ・理想的な室温(夏25℃、冬15℃、湿度50%)防音対策
    ・適度な照明や遮光

8.最近のトピックス

 先日、新幹線の運転士が運転中に眠ってしまって停車すべき駅を通過ししまった事件で有名になった『睡眠時無呼吸症候群』という言葉を覚えてらっしゃる方も多いことでしょう。これは文字通り、睡眠中に一時的に10秒以上呼吸していない無呼吸状態が一晩に30回以上もおきるという睡眠障害です。大きないびきの後、突然いびきが止まって無呼吸となってしまいます。状況によっては生命の危険にさらされることになり、重要な問題です。普通の人と比較して十分と思われる睡眠時間をとっているにもかかわらず、昼間に恐ろしいほどの睡魔に襲われてしまいます。いびきは寝ているときにのどの奥の筋肉がゆるんで、気道が狭くなってしまうために軟部組織が振動しておこります。一般的に高齢になればいびきは多くなりますが、睡眠時無呼吸症候群が疑われるケースでは注意が必要です。毎日アルコールを飲む人や肥満の人、のどや鼻の病気をかかえる人は睡眠時無呼吸症候群をおこしやすいといわれており、生活習慣の見直しも必要です。

表1 おもな睡眠薬

分 類

薬 品 名

非ベンゾジアゼピン系

アモバン、マイスリー

ベンゾジアゼピン系

超短時間型

ハルシオン

短時間型

レンドルミン、デパス、リスミー、エバミール

中間型

ベンザリン、ネルボン、ユーロジン

サイレース、ロヒプノール、エリミン

長時間型

ドラール、ソメリン、ベノジール、ダルメート

(平成15年3月現在)