『寝たきり状態にならないために』

わが国は世界第1位の長寿国となるとともに、猛烈な勢いで「高齢化社会」を迎えようとしています。宮崎県全体では、65歳以上の人口が全人口に占める割合(高齢化率))が全国平均よりも早いスピードで上昇しており、実に6人に1人が65歳以上の「高齢化社会」になったという現実があります。

厚生労働省の人口動態統計によりますと、昭和40年をピークに脳血管障害による死亡率は明らかに減少しています。脳血管障害は大きくは脳梗塞と脳出血、クモ膜下出血の3つに分類されますが、減少したのは実は脳出血による死亡であって、脳梗塞による死亡はむしろ増加、または不変の傾向にあります。また最近、若い人の間でもクモ膜下出血で亡くなる人の話をよく耳にしますが、クモ膜下出血で亡くなる人の数が極端に増えたわけではありません。しかしながら脳血管障害はたとえ死亡しなくても、重大な後遺症を残し寝たきり状態になる最大原因となっています。

一方、2番目に寝たきり状態になる原因として多いのは転倒・骨折です。ちょっとした不注意が取り返しのつかない骨折をきたし、日常の生活にもどれなくなる人が多くなっています。

『寝たきり状態』の原因

 寝たきり状態となると、生活の質が落ちるだけでなく介護をしなければならない人にも多大の負担が強いられることになります。今月はその原因を探ってみることにしました。

1 65歳以上の寝たきり者の主な原因 
T.脳血管障害

厚生統計協会の国民生活基礎調査によれば、図1の円グラフに示したように65歳以上の寝たきり状態のおもな原因は高齢による衰弱を除けば、第1位が脳血管疾患(38%)、第2位は骨折・転倒(13%)ということがわかります。この2つをあわせると寝たきり状態の原因の約半分を占めることになります.最近大きな社会問題となっている“痴呆症”が寝たきり状態の10%を占めていることから“痴呆症”に対しても早急な対応が必要と考えられます。

 最大原因の脳血管障害の最近の特徴として、次のようなことをあげることができます。

1)      脳卒中による死亡数は変わらないが、脳卒中の患者数は依然として増加している。
2)      脳卒中患者の内訳では、脳梗塞患者がその75%を占めている(図2)。

3)      脳卒中の発症年齢が高齢化し、近年では以前より10〜20歳高くなっている。

4)      国際的にも、男性第5位、女性第8位と高い脳卒中死亡率となっている

      単位:万人

脳血管障害の最大の危険因子が高血圧であることは今更いうまでもありません。血圧を下げ、14090未満の安定した状態を保つことこそが最大の脳卒中予防であることを重ねて力説したいと思います。
U.骨折・転倒 

高齢者では転倒による骨折が生活レベルの低下を招き,最悪の場合は寝たきり状態となるケースが増えています。骨折が多い個所として、手をついたことによる@手首の骨折、骨盤やお尻を打ったことによるA大腿骨頚部骨折、B脊椎の圧迫骨折があげられます。転倒しないように住まいをバリアフリーにするなどの環境整備を行い、転倒の原因を取り除くことが大切です。また歩く時に足があがらなくなって転倒するのも一因で、転倒予防のためには足があがりやすいように太ももの筋力を増強する訓練も大切となってきます。この訓練は高齢者が“膝が痛い”といって病院を訪れる原因のほとんどを占める「変形性膝関節症」の治療としても非常に有効です。転倒しないことが最大の予防法ですが、転倒しても大腿骨頚部骨折を起こさないように“お尻に当てるパット”が開発されていますので,ころびやすくなった方は使ってみてはいかがでしょうか?大腿骨頚部骨折をいったんおこすと手術をしない限り以前のように歩くことはできなくなりますし,このような患者さんが後を絶たないため、毎年莫大な医療費がかかっています。このように転倒した際、意外と簡単に骨折を起こしてしまう最大の原因はやはり, 「骨粗鬆症」です。骨粗鬆症にならないようにカルシウム不足やビタミンD不足には注意したいものです。またご心配な方は病院を受診して、骨密度や骨吸収の程度を測定してもらい自分の骨の状態を把握して,必要ならば内服薬の処方を受けることも必要です。