腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)』

腰や太ももの裏、膝下の外側から足の甲にかけてシビレや痛みを感じます。また、しばらく歩くと立ち止まって休まなければ歩くことができません。立ったりすわったりが大変で寝返りをうつのにも苦労している毎日です。
このような症状で外来に来られる患者さんがおられます。このような症状は『腰部脊柱管狭窄症』という病気が原因であることがあります。


1.    腰部脊柱管狭窄症とは?

 足の動きや感覚を伝える神経は 腰の骨(腰椎(ようつい))の中の脊柱管(図1,2,3)という部分を通っています。加齢などで腰椎が変形し、狭くなった脊柱管の中で神経が圧迫されて、神経の血流や栄養が減少したり炎症を起こしたりする病気が『腰部脊柱管狭窄症』です。 年を重ねておこる腰椎や靭帯(じんたい)、上下の骨同士のクッションの役割をする椎間板(ついかんばん)の変性などが脊柱管を狭くする主な原因です。 

2.腰部脊柱管狭窄症の特徴的症状

前かがみで少し休むと症状が楽になる」という症状を間欠(かんけつ)跛行(はこう)(図5)と呼んでいます。11月号で紹介した『閉塞性動脈硬化症』と共通した、この間欠跛行という症状は腰部脊柱管狭窄症の患者でもみられます。歩くときに痛みが強くなり、数分休むとまた歩けるようになることを間欠跛行と呼んでいます。しかしながら間欠跛行でも表1に示したように休息をとるだけでなく、背伸ばしで痛みが悪化し、前かがみの姿勢で改善するなどのいくつかの特徴から、比較的緊急性の高い閉塞性動脈硬化症と区別することが可能です。

  1)三大兆候  

腰痛、下肢痛および間欠跛行が特徴的な症状です。足への神経が圧迫されるた め、痛みやシビレ、違和感などの症状がお尻や足に出るようになります。この症状は立 ったり歩いたりする姿勢のほか腰をそらす姿勢で悪化し、いっぽう前かがみになったり 椅子にかけたりすると改善します。これは、前かがみになることにより腰椎の中を通って いる神経に対する圧迫が軽減され神経の血流が改善されてくるため、痛みやシビレがと れて楽になってきます。

2)中高年層に多いという特徴があります。

  3)女性の場合、変性すべり症の合併が多いというのが特徴です。

   4)腰椎は5個存在しますが腰椎の4番目と5番目、3番目と4番目の間で発生しやすこ とが知られてい ます。

5)症状が進行すると残尿感や歩く際に尿意をもよおすような膀胱直腸障害をおこすことがあります。

3.腰部脊柱管狭窄症の診断方法および治療方法   

  腰部脊柱管狭窄症の診断は間欠跛行などの特徴的な症状と筋力低下、知覚異常などの障害から比較的容易ですが、最近ではMRIなどの画像診断でより確実な診断が得られるようになりました。 症状が軽いうちは痛みが出現するほど歩かないことやツエを使って歩くなどの方法で神経への圧迫を少なくすれば改善します。消炎鎮痛剤や血流改善剤、神経ブロックなども有効です。しかしながら3ヶ月間治療しても改善しない場合には手術も考慮されるべきでしょう。

1)保存的治療法

         1.運動療法・・・歩行訓練、プール内歩行

     2.理学療法・・・電気療法、腰椎けんいん、温熱療法

      3.装具療法・・・軟性コルセット、腰椎前屈装具(前かがみになる装具

     4.薬物療法・・・消炎鎮痛剤、血管拡張剤、循環促進剤、筋肉弛緩剤

2)手術療法

腰の後方から神経を圧迫している(ついきゅう)という骨を切除する椎弓切除術、腰椎に変化が強い場合には腰椎を固める固定術を行うことがあります。症状が続いて日常生活に支障をきたすようであれば、早めに専門医に相談しましょう。


     

     

                    

   4 腰部脊柱管狭窄症

  

図5 間欠跛行の特徴


   

1 腰部脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症の比較

腰部脊柱管狭窄症

閉塞性動脈硬化症

症状

        腰痛

        安静時の下肢痛

        歩行時の下肢痛

        下肢の冷感

        下肢のシビレ感

        筋力低下

        反射異常

        膀胱直腸障害

        足部の色調

        足部の温度 

        足部の動脈触知

あり

なし

あり

あり

あり(起立時に多い)

しばしばあり

しばしばあり

ありうる

正常

正常

正常

なし

あり

あり

あり

あり

なし

なし

なし

白い

冷たい

触れない

自転車の乗車

正常

下肢痛出現

脊髄造影

狭窄・閉塞

正常

動脈造影

正常

狭窄・閉塞

症状が悪化する原因

立位・歩行

背伸ばし

歩行、下肢運動