『未知の感染症―新型肺炎SARS(サーズ)―
今年はインフルエンザワクチン接種がぜひ必要!

新型肺炎SARSはひとまず終息したと伝えられましたが、9月はじめに再びシンガポールで新型肺炎患者の発病が懸念されるとの報道がありました。新型肺炎の原因の詳細が明らかになっていない中で、その治療法が確立されていない現状は人類にとって大きな脅威であることは間違いありません。

1.新型肺炎SARS:重症急性呼吸器症候群

新型肺炎SARSは中国広東省で昨年11月に発生、5ヶ月間で約30カ国・地域に広がり世界を脅かした未知の感染症です。コロナウイルス科に属するウイルスが原因と考えられていますが、感染の有無を診断する検査法はなく、予防できるワクチンがなく、効果的な治療法もありません。インフルエンザシーズンの到来とともにSARSの再流行が心配されています。人類がはじめて遭遇した感染症はSARS以外にもたくさんあり世界の脅威となっています。未知の感染症はこの30年間に30種類以上確認されています。1981年にアメリカで初の症例が報告されたエイズ、人間に感染の恐れがあるといわれるBSE(狂牛病:イギリス、1986年)、1982年アメリカではじめて確認され1996年日本では1万人以上の患者を出した大腸菌O157、1997年香港で人間への感染がはじめて確認されたトリインフルエンザなどが有名です(図1)。

2. 大流行の原因は?

世界を恐怖に落としいれる感染症の多くに共通することとして、野生動物がもつ病原体が原因になっていることが指摘されています。エイズやSARSも動物から人間に感染した、との考えが一般的です。人類による原生林開発などにより珍重動物たちとの接触が多くなり、動物と人間との住み分けが困難となってきたことが多きな原因であると専門家は警鐘をうながしています。
一方、航空機を主力に人や物資の移送方法が大きく進歩し、瞬時にして一国の感染症が世界の感染症へと変遷する事実を見過ごすわけには行かない現状となっています。世界最大の感染症ともいえるエイズは毎年恐ろしい勢いで増え続け、2002年末時点で約4200万人に達し、その70%にあたる約2900万人がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国に集中しています。

3.新型肺炎SARS再流行の心配

SARSの世界的な集団発生は気温や湿度が高い夏の期間中封じ込められていたものの、気候が涼しくなる季節から冬にかけて再流行するのではないかと心配されています。WHO世界保健機構はひと足先に冬を迎えた南半球でSARSの集団発生はなかったものの、近々冬を迎える北半球で再流行の恐れがあるとしてできる限りの準備を怠らないようにと警告しています

4.インフルエンザのワクチン接種は今年こそ強化されるべき!         

毎年、世界中で全人口の10〜20%の人がインフルエンザにかかり、その中の300〜500万人の人が重症となり、少なくとも25〜50万人の死亡者が出ていると考えられています。インフルエンザの重症例や死亡例は、肺炎のような二次感染が原因で、高齢者、免疫機能低下者、慢性気管支炎などの呼吸器疾患患者、慢性心不全などの循環器疾患患者、腎疾患患者などのグループで多く発生します。インフルエンザワクチンはSARSの予防はできないもものの、ワクチン接種を受けた人はインフルエンザにはかかりにくいためSARS感染の疑いをかけられたりSARSと誤認されることもなく、また高価な検査や隔離などの予防措置がとられることもないため、医療の現場でも大きな混乱を招くことは少なくなります。
今年の冬こそは例年にもまして自身の健康のためにインフルエンザのワクチン接種がすすめられます。