交通事故などに遭い、いわゆる『むち打ち症』を受けて治療を続けたにもかかわらず、首や肩、背中や腕、頭の痛みがなかなか改善しない患者さんに 時々出会います。『むち打ち 全治2週間』と診断されても実際の治療が長引いてしまう原因はいったい何なのでしょう?
『むち打ち症』とは
交通事故などで急激な力が体に加わると体が前後に大きく揺すられ、その結果上半身が前方に押し出され、細い首の上に乗った重い頭だけが後方へ残る状態になり、支持組織の弱い首の後に障害が出ます(図1)。首の損傷の中でも、頚椎(首の骨)の骨折や脱臼を起こして脊髄や神経を痛めてしまうと、手も足も不自由となり最悪の場合には寝たきり状態となってしまう危険性があります。これに対して『むち打ち』はそれほどの重症ではなく、首の筋肉や靭帯(じんたい)、関節などを痛めたために首や肩、背中に痛みが走り、持続してしまう症状を指します。したがって『むち打ち』は首の損傷のうちでも、比較的軽いものの総称であり、専門的には頚椎捻挫(けいついねんざ)と呼んでいます。
首を痛めたときの症状分類

  1) 頚椎捻挫型・・・・・・・・・肩が重い、首の筋肉の痛み

  2) 自律神経障害型・・・・肩こり、頭痛、吐き気、耳鳴り

  3) 神経根損傷型・・・・・・腕の強い痛み

  4) 脊髄損傷型・・・・・・・・手足のまひ

『むち打ち症』での首の痛み以外の症状

症状分類に示しましたように、首の痛み以外にもいろいろな症状があらわれます。吐き気やめまい、頭痛のほか腕や手のしびれなどの症状が出ることもあります。これは首の周囲に密集した自律神経のバランスが崩れてしまうためにおこります。この自律神経のバランスがいったん崩れてしまうと首の痛みに敏感になるばかりか、吐き気やめまいなど、さまざまな症状が繰り返され、悪循環にはいってしまうことがよくあります。

『むち打ち症』の治療

頚椎固定具の装着

多くの場合、首を固定するカラーキーパーを着用して首への負担をやわらげ、首の安静を保つと約2〜3週間で自然に治ることが多いのですが、なかなか軽快しないケースもあります。

2) 温熱療法

首や肩の筋肉をあたためることにより痛みの原因物質の放散をはかります。

3) マッサージや運動療法

首や肩の筋肉の緊張を和らげるマッサージや運動療法が効果的なことがあります。

4) 内服薬や湿布など

痛みを取り除くための鎮痛剤や筋肉の緊張をほぐすための筋弛緩(きんしかん)剤のほか、さまざまな湿布やローションタイプの外用剤を塗布します

『むち打ち症』を長びかせないために

温熱療法やマッサージ、内服薬や外用剤の使用と並行して、自律神経のバランスを崩さないための努力も必要です。そのためにはストレスをためない、睡眠を十分にとる、首をうなだれた姿勢での長時間の作業は控える、医師の指導のもとにある時期からはむしろ積極的に自分の好きなスポーツなどで適度な運動を行うなど、首への意識をそらすなどの工夫も大切です。また、むち打ちが『いつまでも治らないのでは?』という不安感をなくしプラス思考で気長に治療していくことも重要です。そこで早く治すための心がまえをまとめてみました。
『むち打ち症』の危険を小さくする運転条件
交通事故による『むち打ち症』の危険を小さくするために次のような注意事項が大切になってきます。

@   頭を保持するための座席のヘッドレストの中心は耳の穴の位置よりもさらに2〜3cm高くなるように調整する

A   減速したり停車するときはバックミラーやルームミラーなどで後続車の動きにも注意する

B   前かがみの姿勢にならないように座席やシートベルトの位置を調整し、正しい姿勢で運転する

以上のようなことに注意して楽しいドライブにしましょう。


 図1 むち打ち損傷の発生メカニズム
     

@通常の状態    A首の突き上げ    B体の前方移動   C首の著しい後傾



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