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運動の秋に 『有酸素運動』を

 

私たちは酸素なしでは生きていけません。また体内の必要なエネルギーをつくるのにも酸素が不可欠です。今回は最近話題になっている有酸素運動の効果に迫ってみましょう。


1.運動不足と生活習慣病

食べた内容にかかわらず、オーバーしたカロリーは体を動かして消費しなければ余分なものとして脂肪に変えられ、体内に蓄積されます。全身の脂肪細胞は180億を超えるといわれていますが、これが脂肪の蓄積場所です。脂肪細胞のひとつひとつが3倍にまで膨らみ、130kg以上もの体脂肪を溜め込むことができるといわれています。こんな時には血液中にも脂肪分があふれて高脂血症という状態になり、これが動脈硬化の引き金となって糖尿病や高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病に脅かされることになります。

2.有酸素運動を理解するために

有酸素運動は英語のエアロビクス(aerobics)を訳したものです。体に過度の負担がかからないように、十分量の酸素を取り込んで一定時間以上続けて行う運動をいいます。脂肪燃焼や心肺機能の向上、持久力の向上などに効果があるといわれています。ダイエットを考えている方には体脂肪を効率的に燃やす有酸素運動がもっと有効です。
  有酸素運動に対して無酸素運動という言葉があります。有酸素運動とは長い時間かけて運動する歩行やジョッギングのように酸素を必要とする運動のことで、逆に短距離走やフィールド競技のように一気に完了してしまう瞬発力型の運動は無酸素運動と呼ばれています。ここでいう有酸素運動とは円滑な呼吸によって酸素を体内に取り込みながら行うスポーツで、ジョギングやランニング、水泳、水中歩行などが代表的です。いっぽう、無酸素運動とは競技中に呼吸をしていないということではなく、体の中の組織におけるエネルギー産生方法が無酸素的であるということです。すなわち、短距離走やウェイトリフティングなどに代表されるような無酸素運動は瞬間的に大きなパワーを必要とするものの、ごく短時間しか持続できないという特徴があります。皆さんもご経験がおありのように、このような無酸素運動をした時にはかなり息切れが強く呼吸が荒くなりますが、これは瞬間的に酸素を使わずにエネルギーを必要とする運動を行うため、運動の後にたくさんの酸素を取り込もうとして早く大きな呼吸になるからと考えられています。有酸素運動では「ハアハア」と息がはずむのに対して、無酸素運動では「ゼイゼイ」と息が切れるのを思い起こせば理解しやすいと思います。

3.有酸素運動に使われる筋肉群

筋肉には瞬発力に優れた速筋(白筋)と持久力に優れた遅筋(赤筋)とがあります。ウェイトリフティングや短距離走など瞬間的に強い力が必要な時は筋肉内に溜め込んでおいた糖質(グリコーゲン)が主原料となってエネルギーが産出されます。この反応では糖質を利用するものの、ほとんど酸素を必要としないため無酸素運動と呼ばれています。この無酸素運動でおもに使われる筋肉は速筋(白筋)と呼ばれ、瞬発力を発揮するのに重要です。これに対して、おもに遅筋(赤筋)が使われる有酸素運動では酸素を使いながら脂肪を利用してエネルギーが産出されるため、肥満や生活習慣病の改善に都合がよいのです。

4.体を動かすのに必要なエネルギーの産生

少し専門的で難しい話になりますが、私たちが運動を行うために必要なエネルギーを作り出す過程には

@ ATP-CPA 無酸素的解糖系 B 有酸素系3種類があります。

@のATP-CP系が最も早く使われ、順にA,Bと使われるようになります。@とAを合わせたものが無酸素運動で約40秒行われ、その後Bの有酸素運動に移ります。運動を行うのに必要な筋肉の収縮をおこすエネルギー源がATP(アデノシン三リン酸)です。
  無酸素運動においては筋肉内に存在するATPを利用するか、筋肉内のグリコーゲンや血糖を利用して無酸素的にATPを作る必要があります。
  安静時の筋肉内には急な運動時に備えてある程度のATPが蓄えられており、酸素の供給がなくても、この蓄えられたATPのおかげで力を発揮できるようになっています。しかしこの蓄えは数十秒でなくなってしまうため、続けて運動を行うためにはATPが合成されなければなりません。
  供給される酸素の量が不足している状態では嫌気的解糖(酸素を必要としない糖質代謝の仕組み)により、酸素を消費せずにATPを作ることで無酸素運動ができるようになります。しかし嫌気的解糖では同時に乳酸を生じ、この乳酸が増えると血液や組織が酸性になるため細胞の働きが悪くなって、痛みやだるさを感じ筋肉が収縮しにくくなり、最終的には運動を続けることが困難となります。嫌気的解糖による無酸素運動の持続可能時間は13分程度で、3分を超えるとやはり酸素を使いながら運動を続ける、いわゆる有酸素運動ということになります。

5.有酸素運動を実践!

無酸素運動も有酸素運動も健康増進や生活習慣病の改善には役立ちます。しかしながら、運動は楽しみながら長く続けられるものでなければ健康増進や理想的なダイエットには結びつきません。そこで有酸素運動がいかに優れた特徴を持っているかを表1にまとめました。
  サッカーやテニスは断続的な有酸素運動であり、継続した有酸素運動としてジョッギングや水泳がもっと効果的なものと考えられています。残念ながら、ゴルフは運動が途中で途切れてしまい、継続した運動ができないことが最大の欠点と考えられ、有酸素運動とは言い難いスポーツといえましょう。
  有酸素運動は20分〜30分以上持続可能で、比較的弱い継続的な力が全身にかかり続ける運動であることが特徴です。このような有酸素運動ではネルギー源として体内に溜めてある体脂肪が燃焼され、その燃焼材料として酸素が必要となります。20分以上有酸素運動を続けると糖質に代わって脂肪の消費率がどんどん上がります。また歩き出して20分頃までは血液中の脂肪が使われ、さらに20分以上続けてようやく皮下脂肪や内臓脂肪などの体脂肪が使われるようになります。体脂肪の燃焼効率が悪い無酸素運動に対して、有酸素運動では酸素を使いながら有効に体内の脂肪を燃焼させていきます。

6.水泳がどうして生活習慣病の改善によいのか?

水泳は全身の筋肉を使う浮動運動であるため血液の循環も促進されるいっぽうで、水の抵抗に逆らって運動を行うため、ゆっくり泳いでも大きな運動効果が得られます。 しかしながら、水中では抵抗が大きいため負荷がかかりやすく、また自由に呼吸できないため、ややもすれば酸素不足から無酸素運動に陥りやすくなるので、有酸素運動のためにはクロールよりも長くゆっくりと泳げる平泳ぎの方が望ましいと考えられます。

7.有酸素運動で肥満が解消!

肥満の原因は先に述べたように肥満細胞にあります。肥満が解消されるためには肥満細胞の中の脂肪が減っていく必要があります。この脂肪が酸素によって効率よく燃焼されるために有酸素運動が有効だということもすでにお話しました。その原理は20分以上の有酸素運動によってゆっくりと体内温度が温まっていくと、肥満の原因である体脂肪内の肥満細胞を破壊する脂肪分解酵素リパーゼが活性化し、肥満細胞中に溜まっていた脂肪が血液中に送り出され燃焼されるようになるからです。

8.有酸素運動はどんな時間に、どんな強度で?

ダイエット、すなわち脂肪を効率よく燃焼させるためには少し空腹の時間、例えば食前がよいと考えられています。その理由は運動でまず使われるエネルギーは糖分が中心であり、脂肪よりも先にまず増加した糖分が消費される食後の時間帯よりも、血液中の糖分量が低い食前の時間帯では同じ運動量でも脂肪の方がより多く使われるからです。しかしながら朝の運動は血糖値が最も低い状況なので、脳の唯一のエネルギー源である糖分が使われると運動中にめまいが起こりかねないので注意が必要です。したがって一般的には食後1〜2時間たってからの運動が理想的と考えられます。
  さて有酸素運動はどれくらいの強度で実践するのが理想的なのでしょうか?有酸素運動の強度は一般的に普段の心拍数プラス10%を目安にするのがよいと考えられています。無理なく楽しく続けていただくために表2に有酸素運動の要点をまとめました。過激な運動は弊害が多くなりますので、特に年配者の運動は12.4km位が適当と考えられます。運動の強度はその人の最大心拍数の6080%が良いとする「220の原理」(表3)が良い目安になります。

9.脂肪を燃焼を促進するための雑学

脂肪の燃焼を促進するのにトウガラシコーヒーがよいといわれています。トウガラシに含まれるカプサイシンが脳に運ばれると内臓感覚神経を刺激してアドレナリンを分泌し、このアドレナリンは脂肪分解酵素リパーゼを活性化することから脂肪燃焼の強い味方と考えられています。またコーヒーはその中のカフェインが脂肪を分解し血液中の遊離脂肪酸の濃度を高くすると考えられています。

10.最後に

有酸素運動により心肺の機能が強化され、末梢の血液循環も改善され代謝がよくなって、中性脂肪値が下がり善玉コレステロールが上昇してくるようになります。生涯のスポーツとして体への負担が少ない有酸素運動を何かひとつ見つけられことをおすすめします。

表1 有酸素運動の特徴

  @瞬発型の無酸素運動に比べて心臓への負担が少ない

  A無酸素運動に比べて消費されるカロリーが大きい

  Bコレステロールが消費されるため、生活習慣病の治療に効果がある

  C多くの人がいつでもどこでも自分のペースでできる運動である

2 有酸素運動の要点

    1.頻度:週3回以上、1回あたり10001500Kcalの運動量を目標

      2.時間:1回あたり20分以上実践

       3.強度:心拍数が110120を目安(心臓疾患のある方は主治医と相談)

4.時間帯:運動する時間帯は食後1〜2時間後に開始(高血圧や狭心症などの方は内  服薬効果が消えやすい朝の時間帯の運動は避ける)

5.水分補給:汗をかいたら水分を補給(スポーツドリンクは糖分が多いので要注意)

6.体調:体調が優れない時は運動を休み、相談


表3 「220の原理」

 1. ランニングの心拍数:(220−年齢)×0.8

 2. ウォーキングの心拍数:(220−年齢)×0.6

 3. 脂肪が燃える心拍数:(220−年齢)×0.55