『あなたのお腹は内臓脂肪、それとも皮下脂肪』

  

 お腹周りや下腹が気になっていませんか?あなたは隠れ肥満ではありませんか?最近、テレビや雑誌で「内臓脂肪」という言葉をよく耳にします。一般的に肥満の人には体脂肪が多いといわれており、中でも心臓病や脳卒中のなど生活習慣病の危険因子と考えられている内臓脂肪への関心が高まっています。内臓脂肪が増えるとブドウ糖をエネルギーに変える大事な役割をするインスリンの働きが悪くなり、糖尿病や高血圧、高脂血症、さらには動脈硬化が進んで、心筋梗塞などの血管の病気をひきおこします。

1.体脂肪の役割と増加の原因

 「体脂肪」と聞くとあまりよい印象はありませんが、実は体脂肪は人間が生き延びるためのエネルギー貯蔵庫で、体温を保ったり、内臓を保護するなど生命維持に大切な役割を担っています。 しかしながら、この体脂肪も適量を過ぎて体内にたまってくるようになるといろいろな障害を引き起こすようになります。体脂肪がたまる原因は体内に入るエネルギーが出て行くエネルギーよりも過剰になるためと考えられています。すなわち、食べ過ぎや飲みすぎ、慢性的な運動不足が大きな原因と考えられています。

2.   体脂肪が増えると?

 体脂肪が増えると肥満を招き、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳出血や脳梗塞などの脳卒中のほか、大腸がんや乳がん、子宮がんなどにもかかりやすくなるといわれています。肥満の指標は国際的に共通したBM I(ボディ・マス・インデックス)が用いられることが多く、次の式で簡単に求めることができます。

      BM I=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m

 BM Iによる肥満度分類は表1のように定められており、生活習慣病予防のためにはどうしても標準体重に近づける努力が必要となります。

3. 皮下脂肪と内臓脂肪のちがい

「肥満と体脂肪との関係」への関心が高まっています。体脂肪といえば皮下脂肪を考えてしまいがちですが、最近話題になっているのは皮下脂肪よりもむしろ、内臓脂肪です。体脂肪とは人の体についている脂肪の総称ですが、皮下脂肪と内臓脂肪の二つに分けることができます。皮下脂肪は、皮膚と筋肉の間の皮下組織にたくわえられる脂肪のことです。一方、内臓脂肪は胃や肝臓、腸などの内臓のまわりに付く脂肪のことです。

皮下脂肪は脂肪酸に分解されて体中の血管をまわって肝臓に入るまでの間、エネルギー源として筋肉などで使われるため、肝臓への悪影響は少ないと考えられています。しかしながら、内臓脂肪の場合は脂肪酸へと分解された後、直接肝臓へ取り込まれるため肝機能に障害をおよぼすことが多くなります。

4.     内臓脂肪型肥満はこわい!

 内臓脂肪は男性ホルモンの影響が強いので、男性の方に蓄積しやすいといわれていますが、閉経期を迎えた女性では女性ホルモンの低下により急激に内臓脂肪が蓄積するようになるため、年齢とともに男女に関係なく内臓脂肪は蓄積しやすくなります。内臓脂肪が多い人は少ない人に比べて約35倍も心筋梗塞になる確率が高いといわれています。したがって体脂肪が蓄積した肥満が内臓脂肪型なのか、皮下脂肪型なのかを知ることはとても大切なことです。簡便な判定方法としてウエストとヒップのサイズを計り、その比が0.9を超えたら内臓脂肪型、0.9以下ならば皮下脂肪型といわれています。また、へその周りの腹囲が男性で85cm、女性で90cmを超えると内臓脂肪型肥満の疑いが強いと考えられており、さらに「ウエスト(cm)÷身長(cm)」が0.5以上でも内臓脂肪型肥満の危険が高いと考えられています。

5.       体脂肪率と内臓脂肪の測定

 最近では体脂肪だけでなく、その分布状態が重要と考えられるようになりました。皮下脂肪は体の表面について脂肪で指でつまむことができますが、お腹の中についた内臓脂肪は体の外からでは計ることができません。一般的に体脂肪率は電気抵抗の高い体脂肪の性質を利用した「体脂肪計」や「脂肪計付きヘルスメーター」のほか、体の2箇所(腕と背中)の皮膚をつまんで皮下脂肪の厚みを計り、合計値から体脂肪率を算出する「皮下脂肪厚測定法」など、簡便な方法で調べることができます。体脂肪率による肥満の目安は表2のようになっており、適正な体脂肪率は男性で1519%、女性で2025%とされています。体脂肪率は体内の水分量で変動しすいため、食後2時間以上あけてからの測定が推奨されています。一方、内臓脂肪の付き方は、病院のCTスキャンで体の断層写真を撮影して調べてもらう必要があります。へそ付近の胴の断面を撮影し、内臓脂肪の面積を測定します。日本肥満学会は治療を必要とする「肥満症」の基準として、BMI25以上で、@肥満が原因の健康障害がある、A内臓脂肪が100cm以上のどちらかを挙げています。私たちの生命を脅かす内臓脂肪型肥満には特に注意が必要です。図1は当院で検査した腹部CT画像で、体脂肪の典型例を示したものです。

6.         体脂肪を減らすために

 内臓脂肪が蓄積すると遊離脂肪酸が過剰に分泌され、これにより悪玉コレステロールが大量に生成されるため動脈硬化を促進し、血管をつまらせてしまうために心筋梗塞や脳梗塞が多くなります。また内臓脂肪の蓄積は糖尿病や、高脂血症、高血圧を招く原因ともいわれています。したがって体脂肪の過剰な蓄積は避けなければなりません。
一般に皮下脂肪や内臓脂肪は次のような特徴があります。皮下脂肪はなかなか付きにくいものの、いったん付いてしまうと落とすのに時間がかかる手ごわい脂肪のため「定期預金」と呼ばれているのに対して、内臓脂肪はカロリーオーバーなどの不注意で簡単に蓄積されるものの、食事制限や有酸素運動で簡単に減らすことができるため「普通預金」と呼ばれています。

体脂肪を減らすためには激しい運動をするよりもウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、スイミングなどの有酸素運動が効果的であるといわれています。食事療法やダイエットだけで肥満を解消し、体脂肪を減らそうとする人がおられますが、体脂肪が減るよりも先に大切な筋肉や骨が減ってしまい、腰痛や肩こり、骨粗鬆症などの病気になりやすく、むしろ危険ともいえます。筋肉や骨を保ちながら効率的に体脂肪を減らしていくためには、やはり運動を取り入れていくことが大切です。運動により筋肉が維持、増進されると基礎代謝が高まり、脂肪が体内で効率よく燃焼されることになります。

7.         体脂肪増加を予防するには

1)       まずは歩くことから

    年齢を問わず、現代人は慢性的な運動不足です。激しい運動ではなく10分ずつ数回に分けても効果的といわれる有酸素運動1日最低20分以上、週3〜4回以上続けることが大切です。

2)       まちがった食生活をしない

    表4に示されるように、食生活が肥満に大きく関与していることはいうまでもありません。3食とらないで1食ぬけば、摂取カロリーが落ちるどころか、かえって私たちの体は飢餓状態を感知し、非常時に備えて体脂肪を蓄えようとします。また日中は働き、夜間は休む生活リズムになっていますので、日中食べたものはエネルギーに変換されやすいものの、夜は脂肪として蓄えられやすくなります。したがって夜遅い食事や重い食事は控えられることをおすすめします。

    

表1 肥満度分類

BMI

18.5未満

18.5以上25未満

25以上30
未満

30以上35未満

35以上40未満

40以上

判定

低体重

普通体重

肥満(1度 )

肥満(2度)

肥満(3度)

肥満(4度)

                     (日本肥満学会肥満症診断基準)

表2 体脂肪率による肥満の分類

体脂肪率

軽度肥満

中等度肥満

重度肥満

男性

20%以上

25%以上

30%以上

女性

30%以上

35%以上

40%以上

表3 内臓脂肪を減らすためのコツ

1.             腹八分目の食事をこころがける

2.             間食や夜遅い食事はひかえる

3.             よく噛んで20分以上かけてゆっくり食べる

4.             お酒はほどほどにする

5.             脂肪分を多く含む肉類や糖分はひかえる

6.             ビタミンやミネラルを多く含む野菜や海藻類をとるように心がける

 7.  体内の余分な脂肪や糖分、消化されなかった老廃物を取り込んで体外に排泄してくれる食物繊維を意識してとる

1 腹部CT撮影による体脂肪増加の実症例

  A:正常  B:体脂肪は正常ながら腹部大動脈の動脈硬化が著明(矢印)

C :厚い皮下脂肪(矢印)   D:異常に増加した内臓脂肪(矢印)

       ※ 体脂肪はCT検査では黒く見えます。