『冬場の入浴中突然死の正体はなに?』

入浴中の突然死事故が増加しています。気温がぐっと下がるこれからの時期は注意が必要です。冬場の入浴中突然死の原因について検証してみたいと思います。

1.    冬の入浴は要注意!

冬の入浴中死亡事故が増加しています。11月から3月までの寒い時期に多く、とくに12月と1月に集中しており(図1)、しかも夜中の時間帯に集中しています。入浴という行為によってもたらされる血圧の変動が「脳出血」や「心筋梗塞」の引き金となり、浴槽内で溺死(できし)してしまうことが多いためと考えられています。平成15年は久しぶりに交通事故死者数が8000人を下回るという予測が発表されました。これに対して住宅内で発生する不慮の事故で年間10000人以上の人が亡くなっており、その約60%が入浴に関するものです。その原因のひとつは溺死であり、しかも65歳以上の高齢者がその85%を占めています。また民間の調査では自宅での入浴事故により、全国で年間14,000人の方が亡くなっていると推定されており、実に驚くべき人数です。

2.高齢者、特に75歳以上の後期高齢者は要注意!

入浴中の死亡事故者は男女差はないものの、年齢別の統計でははっきりした違いがみられます。すなわち、6574歳の前期高齢者が約27%であるのに対して、75歳以上の後期高齢者が約73%と圧倒的に多くなっています。これは、血圧調節機能が低下した高齢者ほど入浴中死亡事故に巻き込まれやすいということを反映しています。冬の季節に、しかも高齢者に事故が多いのは居間と浴室の著しい温度差に原因があるといわれています。暖かい居間から室温の低い脱衣場や浴室に行くだけでも、高血圧症の人や血圧の調節機能が低下した高齢者にとっては危険が差し迫っているといっても過言ではないでしょう。

3.入浴中突然死がひきおこされる原因

毎日の生活の中で一番リラックスできるのは風呂にはいっているときかもしれません。一日の疲れを癒してくれる入浴は日本人には欠かせない健康の源といえましょう。筋肉の緊張がほぐれ、開放感や爽快感が得られることは明日への活力につながります。しかし、高血圧症の人や血圧の調節機能が低下した高齢者にとっては致命的な落とし穴にもなりかねないので注意が必要です。

1.入浴にともなう血圧の変動

 欧米の建物はどの部屋でも一定の温度になるように設計されていますが、日本の建物では冬の季節に暖房している居間と暖房していない脱衣場や浴室で10度以上の温度差も決して珍しくありません。
 寒い脱衣場で衣服を脱ぐと、その寒さに反応して体から熱が奪われないように毛細血管が収縮します。その結果、血圧が上昇し血のめぐりが悪くなります。浴槽に入り熱い湯に触れると交感神経の緊張のため、急激に血圧が高くなる一方で、欧米でシャワーを使った入浴スタイルが多いのに対して肩までどっぷり湯につかる日本式入浴スタイルは心臓にかかる負担が大きいといわれ、さらに血圧が上がる原因となっています。その後、浴槽内で体があたたまると血管が拡張し血圧は急激に下降します。浴槽からあがると、からだが冷えるので熱を奪われないようにと再び血管が収縮するという生理機能が働き、再び急激な血圧上昇が起こります。このように入浴の際はかなりの血圧変動があります。
2.血圧変動がもたらすもの

 血圧が高い人や高齢者の方では入浴時の血圧上昇のため脳血管が破れて脳出血 を引き起こしかねません。また、浴槽内で急激に血圧が下がると血液の流れが悪くなる上に、入浴による発汗のために血液の粘度が増して血管がつまりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞が多くなります。最も多いのが心筋梗塞を代表とする循環器疾患で約70%を占めており、次いで脳内出血やくも膜下出血などの脳血管疾患が約18%となっています。

4.
入浴中突然死を防ぐために


 冬の寒さが厳しい福井、山形、富山などでは入浴中突然死の発生率が高くなっています。しかし
全館暖房が普及している北海道では冬の厳寒にもかかわらず入浴中突然死は
10位以内と発生率は低
くなっています。このことは住環境がいかに大切であるかを実証したものと考えられ、浴室暖房器
具や床暖房などの設置により部屋間での温度差をできるだけなくそうという「温度バリアフリー」
の考え方がもっと普及されるべきだと考えます。
そこで、入浴中突然死を防ぐための工夫について
提唱しておきましょう。
1)   冬場の長湯はひかえ(全入浴時間20分以内)、湯温は38℃〜41℃に設定
2)   脱衣場や浴室を事前に十分暖める工夫
  浴槽のふたを入浴前に開けておいたり、浴室暖房器具や床暖房を設置する。
3)二番湯入浴のおすすめ

  ほかの人が入浴した後は浴室も暖まっており、浴槽内の湯も熱すぎないため高齢者は二番湯入浴をすすめる。
4)半身浴入浴の習慣を
  心臓に負担がかからないように半身浴をこころがけ、肩には暖かいタオルを置くなどの工夫をする。
5)体調不良時や食後、飲酒後の入浴はさける
6)血圧降下剤、安定剤、睡眠薬の服用後の入浴はさける
7)高齢者の入浴は血圧が比較的安定している夕方7時頃までに
8)入浴前後には十分な水分摂取を
9)高齢者が入浴の際はこまめな声かけを

10)高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、てんかんなどの既往がある方は普段から注意を




1 入浴中死亡者の月別人数

総数:2,736


国民生活センター「くらしの危険
No.244浴室の死亡事故」より

(東京、大阪、兵庫の3監察医機関からの浴室内の死亡事故の事例情報集)

図2 時間ごとの入浴中死亡者数

総数 2,588人 時間不明148