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乗るなら飲むな!飲んだら乗るな!
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これから年末・年始にかけてお酒を口にする機会が非常に多くなります。軽率な判断で、重大な飲酒運転事故を起こしてしまわないように、だれもが耳にする『乗るなら飲むな!飲んだら乗るな!』という標語を、今一度じっくり考えなおしてみましょう。

先ごろ福岡市役所の職員による飲酒運転で、福岡博多湾にかかる「海の中道大橋」でRV車が追突されて海に転落、三人の幼い尊い命が奪われたのは記憶に新しいところです。これがきっかけとなって全国で飲酒運転撲滅の機運が一気に高まりました。しかしながら、その後も飲酒運転による重大な人身事故は後を絶ちません。福岡の事件では、追突現場から逃走し、飲酒運転を隠蔽しようとしたことから、「道路交通法違反」と「業務上過失致死傷」の疑いで逮捕されたほか、「危険運転致死傷罪」疑いを検討しています。また、いっしょに飲酒した人も「幇助にあたる」として飲酒運転の制止義務を怠ったという理由で損害賠償を命じる判決が出ています。いっしょに飲んだ人、飲ませた店なども含めて社会全体の意識改革が叫ばれています。倫理観はいったいどこに消えてしまったのでしょうか?


1.「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の違い

「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」を総称して飲酒運転と呼んでいます。この二つはアルコール濃度を数値化するか、しないかの違いです。飲酒運転は道路交通法第65条で禁止されています。「酒気帯び運転」は体内に基準値(呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mgまたは血中1ml中のアルコール濃度0.3mg)以上を保有した状態で運転することであり、おもな罰則は1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。これに対して「酒酔い運転」は呼気検査によるアルコール濃度に関係なく、話し方やまっすぐに歩けないなどの言動から、酔っていて正常運転ができない恐れありと判断された場合で、罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となり、違反点数は25点で免許取り消しとなります(表1)。

表1 飲酒運転と処分内容
違反種別 血中アルコール濃度 点数 処分内容
酒酔い運転   25点 運転免許取り消し(欠格期間2年)
酒気帯び運転
(呼気1リットル中アルコール濃度)
0.25mg以上 13点 運転免許の停止(90日間)
0.15mg以上0.25mg未満 6点 運転免許の停止(30日間)
※この処分は一例であり、過去の交通事故や交通違反の前歴により異なります。
※飲酒運転は事故を起こさなくても免許停止、または取り消しになります。
※欠格期間とはその期間中に免許取得を認められない期間です。

2.飲酒運転はなぜ危険か?

最近、自動車教習場でアルコールを飲んで酒気帯び状態での運転の怖さを実体験させるレポートがありました。「これくらいは大丈夫」と思って運転したところ、停止線を越えて停止したり、カーブを曲がりきれず脱輪したりなど悪戦苦闘している光景が報道されました。運転には高度の判断能力、反射能力や注意力、運動能力が要求されます。しかしお酒を飲むと血中アルコール濃度が上昇し、運転に必要な能力が損なわれてしまいます。その結果、以下のような影響が生じてしまいます。

  1. 中枢神経が麻痺し運動機能が低下してブレーキやハンドル操作が遅れる
  2. 理性、自制心が低下して乱暴な運転になりスピードを出し過ぎる
  3. 視野、とくに動体視力が落ち視野が狭くなるため反射能力や判断力が低下して反応が遅れる
  4. 集中力が低下し、体の平衡感覚が鈍る

ハンドル操作ミスからカーブを曲がりきれず、ガードレールや電柱などに衝突したり、横断中の歩行者を見落として跳ね飛ばしたり、交差点内での信号見落としによる衝突など、重大事故への危険が高まります。


3.アルコールとその代謝(図1

酒税法ではアルコール分1%(1度)以上を含む飲み物を「アルコール飲料」と呼んでいます。お酒はアルコール分を含む、人を酔わせる飲み物です。世界各地で数千種に及ぶお酒が愛飲されています。お酒を飲むと顔が赤くなり多弁になったり、足元がふらついたりなど、いわゆる「酔っぱらい」状態になりますが、これはすべてお酒の中のアルコールの影響によるものです。

アルコールは一部(約3割)が30分ぐらいで胃から吸収されますが、おもに小腸で1〜2時間のうちに吸収されて血液に溶け込み、門脈を通って肝臓へ運ばれます。アルコールはその半分以上が肝臓でADH(アルコール脱水素酵素)という酵素で分解されてアセトアルデヒドになります。さらにアセトアルデヒドはALDH(アセデヒド脱水素酵素)という酵素により酸化され、酢酸へと変化します。酢酸は血液内に出て、水と炭酸ガスに分解され最後には体の外へ出ていきます。

アルコールから分解されたアセトアルデヒドは毒性が強く、顔面紅潮、頭痛、吐き気、脈拍数増加などの不快症状を引き起こします。この不快な症状はアセトアルデヒドが酸化され、無害な酢酸になると消えます。しかしアセトアルデヒドの処理能力は大きな個人差があります。アセトアルデヒド脱水素酵素には5種類あり、そのうちアルコール処理のほとんどは1型と2型で行なわれます。2型(ALDH2)の酵素は血中のアセトアルデヒド濃度が低い時に働きます(1型はアセトアルデヒド濃度が高い時に働く)が、実は欧米人と違って日本人の約半数の人がこのALDH2の活性が弱いか、もっていないため、すぐに赤くなり不快な症状に襲われます。日本人は欧米人に比べてお酒に弱い理由のひとつです。また一般的にお酒に強いと言われる人はALDH活性が高く、お酒の代謝が早い人ということになります。

ADH〈アルコール脱水素酵素〉 ALDH〈アルデヒド脱水素酵素〉
         
アルコール アセトアルデヒド 酢酸 水+二酸化炭素
図1 アルコール代謝

4.アルコール代謝のスピード

体内に入ったアルコールの血中濃度は時間の経過とともに上昇し、摂取後1〜2時間ほどで血中濃度が最高に達します。また、アルコール代謝のスピードには個人差があり、酔うスピードにも差が見られます。同じ量のアルコールを飲んでも体重や飲む時の健康状態や精神状態、飲む前に少しでも食べたかどうかによってもアルコールの血中濃度の上がり方が違います。胃が空っぽの空腹状態で飲むと、胃をすぐに通過して直ちに小腸から吸収され血中のアルコール濃度が急激に上昇します。ウイスキーを空腹時と食事をした後でアルコール最高血中濃度を測定したところ半分に減ったという報告もあります。


5.アルコール血中濃度の測定法(表2

アルコール飲料に含まれるアルコールはエチルアルコール(エタノール)で、無色透明で比重0.79の液体です。アルコール飲料に表示されている度数とはアルコールが占める体積百分率のことです。たとえば、ビール大ビンでは容量633mlで度数が5(0.05%)とすれば、633(ml)×0.05(%)×0.79=25gとなり、ビール大ビンには25グラムの純アルコールが入っていることになります。度数が12度のワインでは、100ml中に12ml、9.5グラムの純アルコールが含まれています。

またアルコールを飲んだときの血中濃度の最大値は理論的には次のように計算されます。

血中濃度(%)=
[飲んだお酒の量(ml)×お酒の度数(%)×0.79(アルコールの比重)]÷[体重(g)×2/3]

(※体重に3分の2をかけるのは一般に体重の約3分の2が水分の量だからです。)
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図2 アルコールと処理時間

たとえば体重60kgの人が15度の日本酒を1合(180ml)飲むと血中濃度は(180×0.15×0.79)÷(60000×2/3)=0.00053(0.053%)ということになります。また体重60kgの人がビール大瓶1本(633ml)を飲んだとすると血中濃度は(633×0.05×0.79)÷(60000×2/3)=0.0063(0.063%)となります。
一般に体重60〜70kgの人のアルコール処理能力は1時間に純アルコール約7g程度(9〜12ml)と言われています。ビール大ビン1本、ウイスキーダブル1杯および日本酒の1合の中に含まれるアルコール量はそれぞれ23g前後とされ、便宜上このアルコール量1単位とします。これらのアルコール量23g(1単位)を1時間で処理できる純アルコール量7gで割ると、このアルコール量が体から消失するのに約3時間かかるということになります。日本酒2合を体内から完全に排泄するのに6時間程度かかるのでアルコール分を翌日に残さないためには、1日の飲酒量が2合以内に抑えることのほかに、何時に飲み終わるかも大切となってきます(図2)。

表2 代表的な酒の種類とアルコール血中濃度の計算に使用する数値
酒類 アルコール度数(濃度) 計算使用濃度 容量
ビール 3〜 5% 5% 大ビン633ml
日本酒 15〜16% 16% 1合180ml、コップ1杯200ml
ウィスキー 40〜45% 45% ボトル1本720ml、シングル30ml、ダブル60ml
ブランデー 43% 43% ボトル1本720ml、シングル30ml、ダブル60ml
焼酎 25〜35% 35% 1合180ml、コップ1杯200ml
ワイン 8〜14% 14% グラス1杯150ml、ボトル1本720ml
ドライ・ジン 47% 47% ボトル1本720ml、シングル30ml、ダブル60ml
ウオッカ 60% 60% ボトル1本720ml、シングル30ml、ダブル60ml
紹興酒 10〜12% 12% ボトル1本600ml
酎ハイ 6〜 7% 7% コップ1杯200ml
カクテル 25% 25% 1杯90ml

6.アルコールで酔う理由

体内に吸収されたアルコールは血液中に入り大脳に達します。アルコールにより、まず脳の表層にあって精神活動などの理性をつかさどる大脳皮質という部分から麻酔がかかります。この麻酔で大脳の理性や判断をつかさどる部分が麻痺すると、理性が損なわれ相対的に興奮状態となり「酔っぱらい」の行動が現われ始めます。「酔いの程度」はこの脳内のアルコール濃度によって決まります。しかしながら実際に脳内のアルコール濃度を測るのは不可能なので、脳内のアルコール濃度と平衡関係にある血中アルコール濃度が酩酊度を知る最も有効な指標であるとされています。また呼気中のアルコール濃度は、この血中アルコール濃度とほぼ平衡しているので、飲酒運転の指標に利用されています。

表3アルコール摂取量と血中アルコール濃度、酩酊度との関係を示しておりますが、血中アルコール濃度が上昇するのにともなって心地よく感じられる「爽快期」から、次第に知覚や運動神経が麻痺してくる「ほろ酔い期」「酔い期」「酩酊期」と進むに従って理性や判断能力が低下し、舌がもつれて言葉が分かりにくくなったり千鳥足になったりしてきます。そして「泥酔期」から「昏睡期」といわれる時期になると、感覚麻痺や呼吸麻痺などを起こし死亡することもあります。

表3 血中アルコール濃度と酩酊度
血中アルコール濃度 区分 症状 アルコール量
0.02〜0.04% 爽快期 さわやか気分。皮膚が赤くなる。陽気になる。判断力が少し鈍る。 日本酒(〜1合)
ビール(大ビン〜1本)
ウイスキー(シングル〜2杯)
0.05〜0.10% ほろ酔い期 ほろ酔い気分。理性喪失。話がなめらかになり抑制がはずれる。手足の動きが活発。呼吸数・脈拍数増加。体温上昇。 日本酒(1〜1.5合)
ビール(大ビン1〜2本)
ウイスキー(シングル2〜5杯)
0.11〜0.15% 酔い期 気が大きくなる。自己抑制がはずれる。立てばふらつく。大声でどなり、怒りつぽくなる。 日本酒(2〜3合)
ビール(大ビン2〜3本)
ウイスキー(シングル6〜8杯)
0.16〜0.30% 酩酊期 まともに歩けない(千鳥足)。運動障害が出現。何度も同じことをしゃべる。呼吸促拍。嘔気・嘔吐 日本酒(4〜5合)
ビール(大ビン5〜7本)
ウイスキー(シングル8〜10杯)
0.31〜0.40% 泥酔期 歩行困難。転倒すると起き上がれない。意識混濁。支離滅裂な言語。 日本酒(7〜8合)
ビール(大ビン8〜10本)
ウイスキー(ボトル1本)
0.41〜0.50% 昏睡期 昏睡状態。小大便失禁。呼吸麻痺。死亡する危険が高い。 日本酒(1升以上)
ビール(大ビン10本以上)
ウイスキー(ボトル1本以上)
((社)アルコール健康医学協会『適性飲酒の手引き』1991年)

7.二日酔いも飲酒運転になる

「二日酔い」とは飲み過ぎた翌朝に不愉快な自覚症状を持つ状態のことを言います。翌日でも、体内にアルコールが残っている二日酔い状態での運転は飲酒運転になります。アルコールは意外と長く体内にとどまり、体に影響を及ぼしています。日本酒3合を飲んだ後、血液中のアルコール濃度が平常に戻るには8〜9時間かかるので注意が必要です。


8.うっかり飲酒運転

自転車も自動車やバイクと同じように車両に含まれるので、酔って自転車を運転すれば「酒酔い運転」として処罰されます。また奈良漬やウイスキーボンボンなどの菓子類でも通常以上に酒気を帯びて運転すれば、「酒気帯び運転」になることがあります。飲酒運転の摘発や事故が相次ぐ中、訪れる参拝客に「お神酒」をふるまうのを急遽自粛する神社も増えています。


9.道路交通法違反

平成14年6月、罰則や行政処分の強化が実施され飲酒による交通事故、交通死亡事故は大きく減少しました。しかしながら飲酒運転による処罰を免れるため、飲酒運転に比べて罰則が軽い「検知器による呼気検査を拒否する悪質なドライバー」が増加しました。そこで検知器による呼気検査を拒否した場合の罰則が引き上げられ、警察官が呼気検査が確実に実施されるようになりました。事故に至らなくても事故を起こさなくても酒気帯び運転は免停、酒酔い運転は免許取り消しとなります。

さて飲酒運転が原因とされる死亡事故は血中アルコール濃度は1.2mgから2.0mg(呼気1リットル中のアルコール濃度0.6〜1.0mg)の間が一番多いという報告があります。アルコールを飲んでいることを知っていながら同乗した場合、その同乗者も道路交通法違反(酒気帯び運転)の幇助容疑で書類送検されます。酒類を提供した飲食店やいっしょに飲酒した人に車を提供した人も幇助容疑で捜査されました。また飲酒運転の危険性を知りながら運転し、死亡事故などを起こした場合、故意に危険、悪質な運転をして人を死傷させたとして「危険運転致死傷罪(刑法第208条の2第1項)」の適用を受け、最長20年の懲役を科せられます。これはまさに無差別殺人に匹敵します。1年間の飲酒運転(酒酔い・酒気帯び合計)の取り締まり件数は約16万件を超えており、飲酒運転が原因の死亡事故は年間700件以上発生しており、そのうち酒酔い運転での死亡事故は150件に達しています。


10.最後に

自治体や事業所単位で定期的に開催される労働安全衛生委員会でも飲酒運転をしない、させないための取り組みについて検討が行われました。『乗るなら飲むな!飲んだら乗るな!』の標語を広報するための署名活動や飲酒検査器の導入が早急に進められるべきだと考えられます。とくに公職にある人に対する世間の評価は厳しく、酒酔い運転は原則、免職処分とする方針が求められています。

「お酒を飲んだら運転しない」、「酒を飲んだものには運転させない」、「運転するものには酒を出さない、すすめない」という、国民一人一人の意識が高まらなければ飲酒運転はなくなることはないでしょう。「ちょっとしか飲んでないから大丈夫」、「もう酔いがさめたから大丈夫」、「家まで近いから大丈夫」「今まで飲酒運転で事故を起こしたこともなから大丈夫」、「捕まったこともないから大丈夫」などと、自分の飲酒運転を絶対に正当化しないでください。飲酒運転で事故を起こすと厳しい社会的制裁により社会的地位を失ったり、職を失ったり、家庭崩壊につながったりします。

蛇足ですが、飲み過ぎると急性アルコール中毒やアルコール依存症、食道がん、肝臓病、糖尿病、不整脈、脳萎縮などの病気が多くなるといわれています。また世界保険機構はアルコールは口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓の癌の発生率を高めると報告しています。また寝る前に「お酒を一杯」という飲酒習慣を持つ人がいますが、アルコールは逆に眠りを浅くしたり、夜中に目が覚めるなどの弊害が多いので飲み過ぎないように注意が必要です。


医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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