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薄毛や禿げに悩む男性に朗報!−医療用内服薬の登場−
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古代エジプトの時代から禿げの治療には多くの精力が注がれてきました。禿げの治療に対して、紀元前4世紀にはすでにアリストテレスはヤギの尿を使用したと伝えられています。またギリシャの医師ヒポクラテスはハトの糞を使ったとも伝えられています。

一方、ストレスが極めて多い現代社会では薄毛や禿げに悩む男性の数がますます増加傾向にあるといわれています。男性の前頭部や頭頂部が薄毛になる脱毛症を"男性型脱毛症(Androgenetic Alopecia:AGA)"と呼んでいますが、わが国における男性型脱毛症に関する意識調査から薄毛・抜け毛を意識している男性の割合は30歳代で約10%、40歳代で約30%、60歳代で約50%、平均で30%であることが示されました。近年実施された調査での推定値によれば薄毛を意識している男性は国内におよそ1,260万人、それを気にしている男性は800万人、薄毛への対処の経験のある男性は650万人ともいわれています。


1.脱毛症の種類

毛髪に関するトラブルは多いものの、医療機関を受診する人の数は意外に少ないと考えられていました。しかしながら脱毛とその対策に関するいろいろな情報が提供されるようになった昨今、あきらめがちだった患者さんが期待を持って医師に相談することが多くなってきました。
人間の頭髪には毛周期(ヘアサイクル)があり、1日50〜100本以内の脱毛であれば正常範囲内とされています。しかし、それを超えるものが「病的脱毛」とされています。脱毛症の種類には以下のようなものがあります。

1)ストレスによる脱毛症

友人関係や家庭内問題、職場での人間関係などは大きなストレスとなります。ストレスが加わると血管周囲の交感神経が緊張状態を迎えるため、頭髪の毛細血管収縮がもたらされ、脱毛現象がおこりやすいといわれています。

2)他疾患に合併した脱毛症
  1. 甲状腺機能障害:甲状腺機能低下または亢進のいずれにおいても脱毛がおこります。
  2. 副腎機能低下:副腎機能が低下した状態では脱毛の頻度が高くなります。
  3. 避妊薬持続服用
  4. 血中鉄分の低下:貧血が現れる前に、その前兆としてまず脱毛が起こります。
  5. 亜鉛欠乏症:血中の亜鉛が低下すると脱毛が起こります。
3)低栄養状態がもたらす脱毛症

過剰のダイエットは血中タンパク質が低下し、脱毛が発生しやすくなります。

4)妊娠にともなう脱毛症

出産後の時期は女性ホルモンが急激に低下するために、脱毛が起こりやすくなります。

5)薬剤による脱毛症

いろいろな内服薬で起こりえますが、とくに抗癌剤投与時には脱毛がよくみられます。

6)放射線照射後の脱毛

頭部に放射線照射を行なうと、毛根の破壊・血行障害の結果、脱毛がみられるようになります。

7)高齢者脱毛症

高齢者では動脈硬化が進行し、その結果頭皮の毛根周囲血管の血流低下が起こり、またホルモン分泌も低下するため脱毛が進行します。

8)円形脱毛症

ストレス説、自律神経失調説、ウイルス説などいろいろな原因が考えられているが、さらに遺伝的要因以外に環境因子も密接に関係していると考えられています。

9)男性型脱毛症

男性型脱毛症は通称、「若はげ」とも呼ばれ、思春期以降に男性の前頭部と頭頂部の頭髪が徐々に軟毛化して細く短くなり、最終的には額の生え際が後退し頭頂部の頭髪がなくなってしまう現象です。特定部位の毛髪だけがミニチュア化して軟毛化してしまうのが特徴です。


2.男性型脱毛症に対する、これまでの国民的な考え方

わが国では遺伝的な素因によって生じる生理的な変化ととらえられ、これを「疾患」として積極的に治療しようという考えもなく、またこれを治療する適切な薬もありませんでした。したがってこれまではあきらめたまま病院を受診することはなく、いろいろな民間療法をためしてみるということが一般的でした。


3.男性型脱毛症による精神的負担

男性型脱毛症は最も頻度の高い脱毛症です。頭髪はその人の外見的印象を左右するばかりでなく社会的、美容的な偏見をもきたしやすいため、社会的関心度は非常に高くなっています。抜け毛が進行し薄毛が目立つようになると「抑うつ傾向」となり、とりわけ若い独身男性においては深刻な悩みとなり社会生活や異性関係が消極的になることもあります。


4.男性型脱毛症の原因
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図1 毛根の構造

現在では遺伝因子によるものと環境因子の両方が原因と考えられていますが、主として男性ホルモンが作用し、遺伝的要素が強いと考えられています。一般に毛乳頭(図1)に運ばれたテストステロンがU型5α-還元酵素の働きによって変換されて産生されたジヒドロテストステロン(DHT)が男性型脱毛症の原因物質と考えられています。表1に示しましたように、もともとテストステロンやジヒドロテストステロン(DHT)は男性の胎児期から青春期/成人期にかけての性機能発達にとても大切な役割を担っています。

表1 テストステロンとDHTの働き
時期 テストステロン ジヒドロテストステロン(DHT)
胎児期 男子胎児の内性器器官の発達(精巣上体、精嚢、射精管など) 男子胎児の外性器の正常な分化(陰嚢、陰茎など)
思春期/成人期 陰茎・喉頭・筋・骨格の発達(男性性機能、性欲、精子産生) 前立腺の発達(男性型脱毛、前立腺肥大、にきびの原因)

5.男性型脱毛症の診断
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図2 男性型脱毛症の進行パターン
(Norwoodの分類)

男性型脱毛症の診断では問診によりほかの家族にいないか?脱毛の経過などをたずね、額が後退し前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認することが大切です。男性型脱毛症は図2のように頭頂部、前頭部、髪の生え際の脱毛の程度・進行により分類されています。


6.男性型脱毛症の治療法

皆さんはいわゆる「発毛」「育毛」の違いをご存知ですか?一般に発毛は医薬品の使用や医師が診察にあたる場合を指し、育毛とはそれ以外の専門技術者による方法を指すものと解釈されています。男性型脱毛症の治療には民間療法も含めてさまざまな治療法が発表されてきましたが、いずれもこれを劇的に改善させる薬剤や方法にはなっていません。育毛剤などを個人で購入して外用するか、毛髪を専門とする美容外科で植毛術を受けるしかなく、医学的根拠のない毛髪ビジネスの氾濫を許してしまう温床となってきました。

1)外科的療法

男性型脱毛症に対して外科的療法は要望も多く、いろいろな方法が取り入れられています。エクステンダー法と呼ばれる縫縮術、残っている有毛部を使って脱毛部の前額部を覆うような皮弁術、ナイロン糸などを使った人工植毛などのほか、最近では一本植毛法・パンチグラフト法などといった自毛植毛術が盛んに行われています。

2)理学療法

血行促進を目的に超短波照射や太陽灯照射を用いることもありますが、その有効性については今ひとつ明らかにされていません。

3)義髪(かつら)

脱毛の進行度や本人の希望により、いろいろなタイプの義髪を選択しますが、長期間にわたり制作費や維持費など経済的負担が生じます。

4)局所外用療法

わが国では医薬品、医薬部外品、化粧品に分類される数多くの育毛剤がヘアケア製品として販売されていますが、医学的根拠が明白な製品はほとんどありません。1999年ミノキシジル(リアップ)が医薬品として認可され、処方箋なしで薬局で購入できるようになりました。また医薬部外品としてサクセス、医薬品に分類されるカロヤンなども育毛剤として販売されるようになりました。さらに漢方には天門冬、当薬などがあり、近年では101が話題となっていました。

わが国で今日まで使用されてきた治療薬は1日2回塗布する外用剤がほとんどでした。しかしながら、1日2回塗布するという手間が長続きしない原因のひとつとなっていたため、「1日1回塗布薬」や「内服薬」などの製剤的工夫が必要でした。ところが今回発売されたプロペシアは1日1回の内服ですむ薬剤であり、その開発意義は実に大きいといえましょう。そこで今回発売となったプロペシアについて触れてみましょう。


7.内服薬治療剤"プロペシア"

プロペシアはもともと前立腺肥大症の治療薬として開発され、後に男性型脱毛症の内服治療薬として使用されるようになりました。1997年アメリカFDAで承認され、現在60ヶ国以上で承認されています。プロペシアは"テストステロン"を男性型脱毛症の原因物質と考えられている"ジヒドロテストステロン(DHT)"に変換させるU型5α-還元酵素の働きを抑制させ発毛を促進する、"U型5α-還元酵素阻害薬"です。その効果は細く短い軟毛を硬毛に変化させるもので、まったく毛の生えていないところから毛が新生することはありません。

1)男性型脱毛症の改善率

プロペシアによる男性型脱毛症の改善率は約55%であり、5年後の写真効果によれば約90%で抜け毛の進行が抑制される、という改善効果がみられます。

2)飲み方

食事の影響を受けませんので飲み忘れのない時間に決めて飲むとよいでしょう

3)本剤が使えない人

男性における男性型脱毛症のみの適応であり、他の脱毛症に対する適応はなく、20歳未満での使用ではその安全性や有効性は確立されていません。また本剤の成分に過敏症の既往がある患者、妊婦または妊娠している可能性のある婦人および授乳中の婦人はジヒドロテストステロン(DHT)低下作用により男子胎児の生殖器官などの発育に悪影響をおよぼす恐れがあります。したがって妊娠中の女性は粉砕・破損した錠剤に直接触れないようにすることが必要です。さらに本剤は主に肝臓で代謝されるために肝機能障害のある患者は慎重に投与される必要があります。

4)効果の発現

頭髪は一ヶ月で約1cmしか伸びませんので、どんな育毛剤でもその効果を判定するためには少なくとも3〜6ヶ月間は治療を継続する必要があります。3ヶ月間でも効果が発現する場合もありますが、通常はその効果が確認できるまで6ヶ月間続ける必要があります。またその効果を持続するためには服用を継続する必要があります。

5)副作用

副作用として性欲減退、性機能低下の訴えが4.2%、勃起機能不全が0.7%、臨床検査値異常が0.7%の患者にみられたとされています。またかゆみ、口唇のはれ、顔面腫脹、蕁麻疹、発疹などの副作用もわずかながら報告されています。

6)そのほか

前立腺癌の腫瘍マーカーである血清前立腺特異抗原(PSA)の濃度が40〜50%低下するため、前立腺癌診断の目的で血清PSAを測定する場合は2倍した値を目安として評価することが大切です。前立腺癌の検査を受ける人はプロペシアを内服していることを主治医に伝えてください。血清PSA 値は2ヶ月服用をやめれば元にもどります。

プロペシアは医療用医薬品のため、購入・服用には医師の診断・処方箋が必要となります。患者さんの健康状態・体質・病状によってはおすすめできない場合がありますので、主治医とよく相談してください。


8.最後に

男性型脱毛症治療の目標は、抜け毛の進行を遅くし現状を維持しながら、毛髪を増やすことです。少なくとも6ヶ月間継続的に内服し、服用後半年から1年の間に増毛効果が出るのを期待しましょう。


医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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