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医療保険で禁煙サポート!
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「タバコが身体によくないのはわかっているけど、なかなかやめられない!」と禁煙に成功できなかった方々も「禁煙のための医療支援」と「タバコの増税」が後押ししたことで、「ようやく禁煙に成功した!」と喜びの声を少しずつ聞くことができるようになりました。今こそ、禁煙のチャンスかもしれません。

東京都千代田区などでは一定地域での路上喫煙に対してすでに罰金の条例が施行されています。またJR各社は近々、寝台車や貸し切り列車を除き新幹線や在来線特急を全面禁煙とする方針を打ち出しました。これまでにも「禁煙車両」を設定していたものの、喫煙車両の煙が禁煙車両に流れ込むなどの苦情もあり、全面禁煙化に踏み切ることを決めたようで喫煙者はますます肩身の狭い思いをさせられることになりそうです。

国の健康指針である「健康日本21」の「21世紀における国民健康づくり運動」に示されているようにタバコの危険性について正しい情報を提供し、喫煙を防止し、受動喫煙から非喫煙者を保護し、禁煙のための支援を行い、「タバコのない社会」、「無煙社会」を創ることが大切だと考えられます。


1.「ニコチン依存症」に対して保険適応!

2006年4月1日から「ニコチン依存症」の治療が保険適応となりました。また、これまで自費でまかなっていた、「ニコチネル」という禁煙補助薬(貼り薬)が2006年6月1日から医療機関で処方できるようになりました。全国的にも禁煙外来を実施している医療機関が少しずつ増えてきています。


2.保険適応になるまで

禁煙によって、喫煙が原因と考えられるさまざまな疾患の予防が可能となり、その結果、医療費を削減できることが期待され保険医療の適応となりました。保険導入を決定する中央社会保険医療審議会において「喫煙によってニコチン依存症となり、それが疾患であるならばその治療には医療保険が給付されるべきである」とする意見と、逆に「喫煙は嗜好によるものであり、嗜好によってニコチン依存症になったとしても、それは自己責任であり治療を医療保険から給付すべきでない」という意見もありました。まずは限定的に1年間実施し、その評価を行うことになっています。


3.ニコチネルとは?
図1 ニコチネルTTS
図2 ニコチネルTTSを貼る場所

禁煙補助薬のニコチネルTTSは3種類(30cm2、20cm2、10cm2)(図1)あり、サイズが小さくなるにつれて含まれるニコチンの量が少なくなります。一般的にはニコチンの量を(30)(20)(10)と徐々に減らし、最終的にニコチネルTTSの使用をやめます。ニコチネルTTS(30)にはニコチンが52.5mg、(20)には35mg、(10)には17.5mg含まれています。しかしながら、それぞれのニコチネルTTSから実際に体内に吸収されるニコチンの量は40〜60%とされているため、(30)から約21mg、(20)から14mg、(10)から7mgのニコチンが体内に入っていくことになります。一般的に1日の喫煙本数が5本以下の人は(10)から、5〜10本の人は(20)から、それ以上の人は(30)からという目安で処方されることもあるようですが、実際に各個々人が喫煙しているニコチンの量をタバコケースに記載してあるニコチン含有量から計算して開始するのが理想的と考えられます。

この薬を貼っている時に喫煙すると、過量のニコチンが摂取される危険性があり、頭痛やめまい、はきけなどの副作用が現れる恐れがあります。また貼る場所は腹部、腰背部、両上腕部(図2)のいずれかに貼りますが、皮膚への刺激を避けるために、貼りかえるごとに貼る場所を変えて、繰り返し同じ所に貼ることは避けてください。


4.対象患者

医療機関で禁煙治療を受けることができる対象患者は以下のすべての要件を満たす必要があります。したがって、すべての希望者が対象になるわけではありません。

  1. ニコチン依存症管理料の算定対象となる患者は次のすべてに該当するものであって、医師がニコチン依存症の管理が必要であると認めていること
  2. 「禁煙治療のための標準手順書」に記載されているニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、「ニコチン依存症」と診断されていること
  3. ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること
  4. 直ちに禁煙することを希望している患者であって、「禁煙治療のための標準手順書」(日本循環器学会、日本肺癌学会および日本癌学会により作成)に則った禁煙治療プログラム(12週にわたり計5回の禁煙治療を行うプログラム)について説明を受け、当該プログラムへの参加について文書により同意していること

5.今回のプログラムには若年者に対する配慮が足りない!

今回禁煙治療に保険が適用されたことは禁煙治療推進の第一歩となる意味で高く評価できます。しかしながら、対象患者が 1)ニコチン依存症と診断される必要がある上に、 2)ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の患者とされています。大きな社会問題となっている若年喫煙者に対する禁煙治療はこの2つの条件により、ほとんどのケースが保険治療の対象にならないことになります。タバコの人体に与える悪影響を今こそ理解し、回避して欲しい若年者に対して適応拡大を図っていく必要があります。


6.医療保険を使って禁煙を応援できる医療機関

医療保険を使って禁煙を応援できる医療機関は以下のような基準をクリアする必要があるため、すべての医療機関が禁煙を応援できる施設になっているわけではありません。禁煙治療を行うことができる施設基準は以下の条件を満たす必要があります。一項目でも満たせない時は医療保険を使っての禁煙治療を行うことはできないことになっています。

  1. 禁煙治療を行っている旨を医療機関内の見やすい場所に掲示していること
  2. 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること
  3. 禁煙治療に係る専任の看護師または准看護師を1名以上配置していること
  4. 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること
  5. 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関の建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有または借用している部分が禁煙であること
  6. ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等(禁煙の成功率)を、社会保険事務局長に報告していること

7.では実際にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?

「ニコチン依存症」を「治療が必要な疾患」と国レベルで認めたことは画期的であり、これから加速的に禁煙診療が進むことになるでしょう。しかしながら、今回はあくまでも「ニコチン依存症」に対する治療であり、「禁煙治療」全般を対象としたものではないことは心にとめておくべきでしょう。日本循環器学会、日本肺癌学会および日本癌学会の3学会により作成された「禁煙治療のための標準手順書」に従い、「ニコチン依存症」と診断された患者さんのうち、禁煙の希望のある方に対して計5回行われる治療に対して、保険を適用するというものです。

実際には表1のような試算となり、保険が3割負担の方の支払いはニコチネルTTS薬代や処方料を加味すると治療終了のころにはほぼ同額の出費となります。今後も自費での禁煙治療は可能ですので、どちらがよいか選択してみるのもよいでしょう。

表1 ニコチン依存症管理料
  診察料 管理料 窓口支払い
1割の場合 3割の場合
初回(1週目) 初診料270点(2700円) 230点(2300円) 500円 1500円
2回目(2週目)
3回目(4週目)
4回目(8週目)
再診料74点(740円)

184点(1840円)

258円

774円

5回目(最終回)(12週目) 再診料74点(740円) 180点(1800円) 254円 762円
合計     1528円 4584円
※禁煙治療のために外来に初めて来られた場合の試算です
※ニコチネルTTSの処方料および薬代は別料金となります

8.禁煙がどうして必要か?タバコの害についてもう一度考えてみましょう。
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図3 日本の男性一般集団の喫煙率

早くから喫煙率が低下した欧米諸国では、男性の肺癌死亡率が低下していることが明らかになっています。一方、わが国では肺癌が1998年に胃癌を抜いて最も死亡数の多い癌となり、現在なお上昇傾向を示しています。禁煙化で欧米諸国に遅れをとったわが国でも禁煙の重要性は少しずつ理解されてきましたが、まだまだ浸透しているとはいえません(図3)。全国の中小、大企業から無作為に5,000事業所を選んで行われた厚生労働省の調査(回答2,280社)、全館禁煙を実施している事業所は20.7%に到達し、前年の10.2%に対して約2倍に増えていることがわかりました。
女性、とくに20歳台の女性の喫煙率は昭和40年度が6.6%、平成13年度が24.1%であり、ここ40年足らずで約4倍増加しています。平成13年度では約4人に一人が喫煙しているといわれています。女性とタバコとの関係についてはいろいろな調査結果がでています。

  1. 喫煙者の子宮癌は吸わない人に比べて約1.6倍も高い
  2. 妊娠しにくく、また子宮外妊娠しやすくなり、また早産や自然流産が非喫煙者の1.5倍に増える
  3. 妊娠中は胎児死亡や死産、出産直後の胎児死亡の確率が高くなる
  4. 喫煙によって胎盤や胎児への血管が細くなってしまうので胎児に十分な栄養や酸素が届かなくなるため未熟児誕生の原因につながる
  5. 知能や発達の遅れ、発育に影響する
  6. 母乳には血液中の約3倍に濃縮されたニコチンが含まれており、ニコチン中毒になってしまう新生児がいる。
  7. 新生児の夜泣きや不機嫌はニコチン切れの禁断症状のことがある
  8. タバコはしみや口臭、ヤニ、歯槽膿漏など美容の大敵

これまでの多くの研究から、喫煙は肺癌の重要な危険因子であるばかりか、咽頭癌、喉頭癌などの耳鼻咽喉科の癌や食道癌、胃癌などとも大きな関係があります。また喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の発生が約2倍多く、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患にも罹患しやすいと考えられています。

また肺の病気は肺癌だけでなく、「タバコ病」といわれる「肺気腫」にも深く関与しています。喫煙者の約20%が肺気腫になるといわれますが、わが国の推定患者数は530万人と考えられています。この病気のために酸素ボンベの携帯を必要とする人が全国で約10万人ともいわれています。


9.最後に
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日本癌学会会員(ドクター)喫煙状況アンケート調査結果
(実施日:2004年8月)
(対象となったドクター:1146名)

わが国の癌治療を先導している日本癌学会のドクター1146名を対象に行われたアンケート調査(2004年8月)の結果をグラフにしてみました。さすがに禁煙に成功したか、または吸ったことがない人が多いようです(図4)。喫煙者が実際に禁煙に成功(図5)するのはそれぞれの年齢層で約50%と難しいようです。1回で禁煙に成功するのも困難(図6)ですが、いったん成功すれば4年以上にわたり禁煙を継続できているドクターは約83%(図7)となっています。

1箱270円のタバコを、1日2箱、1年間吸うと、270円×2箱×365日=約190,000円かかり、年利1%複利計算で、5年で100万円、10年で200万円になります。こんな大きなお金が煙となって消えてしまっています。もったいない話ですね。

禁煙は一気にやめることが大切です。「まず半分に減らす努力をしている」という言葉をよく耳にしますが、中途半端に減らすと一本を丁寧に大切に吸うようになるだけで血中のニコチン濃度は決して減ることはありません。減煙ではなく一気に禁煙をするのがコツです。


医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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