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知っておきたい、いろいろなウイルス性肝炎 −生肉でも肝炎がおこる!−
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今年も地方自治体(市町村)主催の基本検診が始まりました。5年ほど前からウイルス性肝炎の項目が基本検診の中に取り入れられようになりました。その結果、B型肝炎、C型肝炎は比較的よく知られるようになりましたが、まだまだ周知されているとはいえません。またB型肝炎、C型肝炎のほかにもいろいろなウイルス性肝炎が存在しており、それらを再確認しておきましょう。


1.肝疾患といえば
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図1 肝硬変の原因
図2肝癌原因

肝疾患といえば、肝炎、肝硬変、肝癌を思いおこされることでしょう。近年、肝疾患に対する診断、治療は飛躍的に進歩し、予想される悲劇的な結末から生還できることも少なくありません。厚生労働省の統計によれば、わが国の肝硬変を中心とした慢性肝疾患は死亡原因の上位を占め、中でも肝癌は死亡原因の第1位である悪性腫瘍の中で、男性では肺癌、胃癌に次いで第3位、女性でも第4位となっています。これらの肝癌の多くはC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどの持続感染が原因でもたらされた慢性肝炎から発生することが示されています(図1 肝硬変、図2 肝癌)。現在、わが国では1年間に慢性肝炎患者150万人の1〜2%の人が、また肝硬変患者約30万人の6〜7%の人が肝癌になると考えられています。


2.いろいろなウイルス性肝炎

現在、肝炎ウイルスにはA型(HAV)、B型(HBV)、C型(HCV)、D型(HDV)、E型(HEV)の5種類があり、これらがウイルス性肝炎をひきおこし、一部は慢性化することが知られています。血液を介して感染するのはB型、C型、D型の3つの肝炎ウイルスです。このうち明らかに慢性肝炎、肝硬変、肝癌になるのはB型肝炎、C型肝炎です。一方、A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスは経口感染するために、流行することが知られています。E型肝炎は日本には少ないといわれてきましたが、最近になって日本ではブタや鹿での感染が明らかとなり、これらの肉を生で食べるのはたいへん危険です。

1.A型肝炎

A型肝炎ウイルスは腸管内で増殖し糞便中に排泄されるために、ウイルスに汚染された水や生ガキなどの貝を口に入れると経口感染する危険性が高くなります。中国、東南アジアなど、A型肝炎ウイルスの汚染地域を旅行する人の間でA型肝炎の感染が比較的多く報告されています。旅行先では「生ものを食べない、生水を飲まない」ことが大切です。また汚染地域を旅行する際には感染予防のため免疫グロブリンを注射しておくと数週間は感染を防御できるといわれています。2003年11月にアメリカのレストランで490人の客がA型肝炎になり、3人が劇症肝炎で死亡しました。汚染された食物が原因であり、アメリカのような先進国でもまれに集団感染することが示されました。

2.B型肝炎
2−1:He抗原陽性か、He抗体陽性かを知る

B型肝炎ウイルス持続感染者(B型肝炎キャリア)の中で、HB e抗原陽性者は血中ウイルス量が極めて多いため、感染力が強く、性交渉や出産でパートナーや胎児に確実に感染させてしまいます。一方、HB e抗体陽性者はウイルス量が少なく感染力は弱いため、性交渉や出産で感染させる危険性はほとんどありません。しかしながらHBe抗体陽性者の中にはウイルスが増殖している人がいて(HBV DNA高値)、彼らから感染すると致命的な劇症肝炎になることがあり、注意が必要です。ただし、HBs抗体が陽性の人は感染しても肝炎を発症することはありません。

2−2:感染様式:血液を介して感染(精液などにも存在)

血液が付着しただけでは絶対に感染することはありませんが、傷があればそこからウイルスが侵入して感染することがあります。B型肝炎患者さんと髭剃りの共用は避けるべきでしょう。

2−3:予防法:即効性が必要な場合は免疫グロブリン(HBIG)、長期予防にはB型肝炎ワクチン(HBワクチン)

針刺し事故の場合は、すぐに患部を強く手で血液を搾り出し流水で洗い流します。そしてHBs抗体陰性の場合はすぐに中和抗体のHBs抗体を含んだ免疫グロブリン(HBIG)を注射します。これでほぼ感染は防止できます。長期予防のため、あらかじめB型肝炎ワクチンを注射することがあります。B型肝炎ワクチンを通常2〜3回注射すると中和抗体(HBs抗体)ができ、感染を防御できます。ただ、抗体ができても3〜5年後には抗体価が低下することが多く、この場合には、今一度B型肝炎ワクチンを注射し抗体価を高めます。これを追加免疫と呼んでいます。

3.C型肝炎

C型肝炎患者の採血針が誤って刺さったりした場合は、B型肝炎の場合と同じようにただちに患部を強く手で血液を搾り出し、流水で洗い流します。これを行えば感染が成立する危険性は極めて少なく(1%以下)なります。C型肝炎は血液を介して感染しますが、C型肝炎患者さんの血中ウイルス量はB型肝炎のHBe抗原陽性者に比べると1/100〜1/1000位しかなく、その感染力はB型ほどは強くないことから、性交渉など日常生活の中で相手に感染させる危険性もほとんどありません。しかし、残念ながらC型肝炎予防のための免疫グロブリンやワクチンはまだ製造されるに至っておりません。

4.D型肝炎

基本的にはB型の持続感染者(B型肝炎キャリア)にのみ重感染するもので、単独でこのウイルスに感染することはありません。日本人ではこのウイルスに感染している人はほとんどいないと考えられており、必要以上に敏感になる必要はありません。

5.E型肝炎

E型肝炎ウイルスは東南アジア、中近東などに多く、 日本には存在しないと考えられていましたが、最近になって日本にも存在することが明らかになりました。生後3ヶ月以内のブタはE型肝炎ウイルスに感染していることが判明、ブタから人への感染の危険性が指摘されています。また平成15年に兵庫県で鹿の生肉を食べてE型肝炎に感染したケースも報告されました。ブタや鹿の生肉、とくに生の肝臓(レバー)は極めて危険です。鹿のE型肝炎ウイルスと感染者のE型肝炎ウイルスはその遺伝子構造が一致しており、人畜共通感染症であることも明らかになっています。わが国では患者さんの多くが北海道で報告されています。

6.G型肝炎とTT型肝炎

これらのウイルスにはいくつかの型(遺伝子型)があり、B型やC型肝炎ウイルスに感染している日本人ではこのウイルスにも感染している人が比較的多くみられます。これらは急性肝炎をひきおこすことがありますが、慢性肝炎や肝硬変へ進展する危険性は低く、臨床上もあまり大きな問題はありません。


3.慢性化しやすいB型肝炎、C型肝炎

慢性化しやすいB型肝炎やC型肝炎は実際にはどのようにして感染が成立しているのでしょうか?表1に示しましたように、血液内に混入している肝炎ウイルスが何であるかを判定することが困難であった時代に血液製剤を投与された血友病患者や輸血を受けた患者にB型肝炎やC型肝炎の感染が多くみられていました。最近では血中の肝炎ウイルスが少なくても核酸増幅検査(NAT)という優れたスクリーニング方法(篩にかけること)が取り入れられてからは輸血後肝炎は激減しました(表2)。また母親がB型肝炎ウイルスに罹患していることが明らかな場合は母子感染を防止するため、1995年から妊婦や出生児に対して血液検査や免疫グロブリン(HBIG)、B型肝炎ワクチンの投与が健康保険で行われるようになり、母子感染はほぼ根絶されるようになりました。

表1 感染経路からみた最近のB型、C型肝炎ウイルスの感染率(%)
感染経路 B型肝炎ウイルス C型肝炎ウイルス
母子感染 25 〜10
非加熱血液製剤
(1972〜1988)
52
輸血 0〜0.1
血液透析 2〜3
針刺し事故 1〜60 0〜10
表2 わが国の輸血後肝炎の発生率(%)
調査期間(年) 輸血後肝炎発生率
B型 非A非B型
C型 非B非C型
1971〜1972 3.5 8.6
1973〜1989 0.3 14.2
1990〜1991 0.6 1.8
1992〜1998 0.1 0.2

4.B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの地域性

世界的にみると、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは地域性の存在が明らかとなっています。表3にみられるように、台湾やアジア、アフリカにB型肝炎ウイルスの無症候性肝炎キャリア(肝臓や血液中にウイルスが長く存在するが、症状がない人)が多いことがよくわかります。また、欧米に比べてわが国では、B型、C型肝炎ウイルスともキャリアの率が高くなっています。

表3 全人口に対する無症候性肝炎ウイルスキャリア率(%)
対象 B型肝炎ウイルス C型肝炎ウイルス
欧米 0.1 0.04〜0.5
アジア・アフリカ 3.0〜10.0 0.6 〜3.5
台湾 15.0〜20.0 0.6 〜0.9
日本 1.0〜2.0 1.0 〜1.5

5.肝炎ウイルス検査を受けることが望ましい人達や職業

表4に示された人達はウイルス性肝炎に脅かされる危険性の高い、ハイリスク群の人達です。また表5のように他の職場・職業の人よりも肝炎に感染する危険が高い人達も肝炎ウイルス検査をぜひとも一度は受けられることをおすすめします。

表4 ウイルス性肝炎のハイリスク患者で肝炎ウイルス検査を受けるべき人達
  1. 1992年(平成4年)以前に輸血を受けた人や血液製剤を投与された人達
  2. 長期にわたって血液透析を受けている人達
  3. 大きな手術や臓器移植を受けた人達
  4. 肝炎ウイルスのキャリア(持続感染者)の母親から生まれた人達
  5. 薬物乱用者や性乱交者
  6. 入れ墨、針治療などを受けた人達
  7. 医療関係者
  8. 肝炎多発地域に住んでいる人達
表5 肝炎ウイルス感染の危険が高い職場や職業
  1. 病院や診療所、歯科などの医療機関
  2. 介護老人保健福祉施設や身体障害者福祉施設
  3. 助産所や鍼灸院
  4. 血液をあつかう検査機関
  5. 医療廃棄物収集・処理業の事業場
  6. 救命救急措置を行った職場
  7. 理容・美容業

6.最後に

たとえ感染を受けていても今日では、いろいろと有効な治療法が確立されており、主治医のもとで十分な治療と管理を受けていれば、肝硬変、肝癌などの病気は阻止できるようになってきています。積極的に肝炎ウイルス検査を一度は受けておきたいものです。


医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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