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大切な睡眠のリズム
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新年度に入ったこの時期は環境の変化が著しく、「五月病」に代表されるような心身の変化が現れ、中でも大切な睡眠のリズムが失われがちです。都会では「眠らない街」といわれるほど、昼夜の区別がない24時間社会となっています。インターネットが発達した現代の情報化社会はビジネスマンを深夜まで就労させ、交代制勤務を強いるなど、睡眠のリズムは悪化するばかりです。さらに日本経済は平成の大不況から抜け出せず、就職難やリストラを増やし、また成果ありき主義の導入はビジネスマンのストレスを増大させています。このように現代社会を取り巻く環境には正常な睡眠を妨げる数多くの要因が氾濫しているといえましょう。


1.睡眠の大切さ

より快適に、より健康に毎日を過ごし生き生きと仕事に取り組んでいくためには、快適な睡眠を確保することがとても大切です。私たちの身体は「日中活動し、夜間には睡眠をとるようにプログラム」されています。睡眠は身体の休息もさることながら、脳を休息させるためにとても大切なことです。身体を休めることで身体の疲れはある程度回復できても、大脳は起きている限り休息することは不可能です。睡眠は脳を休めて精神的な疲労を回復させる大切な営みでもあります。


2.不眠に悩む人たち

「不眠」とは心身の健康を維持するのに必要な夜間の睡眠が「量的」に、または「質的」に不足して昼間の日常生活に支障をきたし、本人が大きなストレスをかかえている状態と考えることができます。ある統計によれば日本人の5人に1人は不眠で悩んでいるといわれています。日本人男性の18%前後、女性の20%前後の人が不眠を訴えているという結果が得られており、家事や子育てのほか、仕事との両立や高齢化社会における介護など、実にさまざまな役割を担っている女性の不眠がさらに増えつつあります。


3.不眠のタイプとその原因

不眠には表1のように、入眠障害、中途覚醒、熟眠障害および早朝覚醒の4つのタイプがあります。

表1 不眠のタイプ
不眠のタイプ 症状
入眠障害 ふとんに入っても寝つくまでに時間がかかるタイプで不眠の中で最も多い症状
中途覚醒 夜中に何度も目が覚めてしまい、その後眠れないタイプ
熟眠障害 睡眠時間のわりには、よく眠ったという熟睡感がないタイプ
早朝覚醒 朝早く目が覚めてしまい、眠れなくなるタイプで高齢者に多い

また不眠が続く期間の長短により、ちょっとした心配事で眠れなかったり、旅行先で寝つけないなどといった心理的ストレスや一時的な環境の変化が原因で夜間眠れないものを一過性不眠、1〜3週間持続するものを短期不眠、一ヶ月以上のものを長期不眠と区別することがあります。

不眠の原因には表2のようにいろいろな要素があるため、不眠の解消には原因の特定が必要です。

表2 不眠の原因
不眠の要素 原因
身体的要因 更年期障害、心臓疾患、消化器疾患、がんなど
心理学的要因 職場や家庭におけるストレス、精神的ショックなど
精神的要因 うつ状態、統合失調症、アルコール依存症など
薬理学的要因 喫煙、飲酒、カフェイン、常用薬、市販薬、健康食品など
生理学的要因 交代勤務、海外出張による時差ぼけなど

女性の睡眠障害はもともと女性ホルモンと深い関係があります。女性ホルモンの分泌は妊娠、出産などのライフイベントのほか、更年期の時期にもめまぐるしく変化するため、睡眠障害の大きな要因となっています。特に排卵〜月経直前にかけて盛んに分泌される黄体ホルモンは「睡眠の質」を悪化させることがわかっています。睡眠時間は変わらなくても深い睡眠の割合が減り、浅い睡眠状態になるため日中の眠気や不眠、頭痛やイライラなど心身の不調の原因のひとつとなっています。


4.理想的な睡眠時間の定義はない
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図1 日本人の平均睡眠時間

睡眠は「長さ」より「質」が大切です。理想的な睡眠時間は「1日8時間」とよくいわれますが医学的根拠はありません。近年、日本人の平均睡眠時間が年々減少しており、日本人の平均睡眠時間(図1)は7時間23分で、30〜40代の働き盛りの年代の睡眠時間が短いという結果が出ています。しかし睡眠時間にはかなりの個人差があって、わずか3〜4時間の睡眠で充分な人もいれば、9時間以上の睡眠が必要な人もいます。睡眠は時間よりも、ぐっすり眠ったという満足感が得られる「質」のよい睡眠の方が重要です。


5.不眠の治療

まずは自分にあった睡眠リズムを保つために生活習慣を見直し、眠れるための環境を整えることが大切です。

1)環境対策

眠れるための環境づくりがとても大切なことはいうまでもありません。快適な睡眠を得るために寝室環境を整えましょう。

:ちょっとした物音が寝つけない原因になりやすいので、室外からの防音対策として二重サッシや雨戸、厚手のカーテンなどを使用する
:一般的に寝室の明るさは20〜30ルクスが良いものの、個人差で調整する
温度・湿度 :室温は夏が25℃、冬は15℃、湿度は年間を通して50%が理想的、冷房は25〜28℃、暖房なら18〜22℃を目安にする
2)非薬物療法

環境対策で不眠が解消されない時は不眠をひきおこしているストレスや不安を軽減することで不眠症状を改善させる精神療法や自己暗示を主体とした自律訓練法が有効なことがあります。

3)薬物療法

環境対策や非薬物療法で改善しないときは睡眠薬を使用します。不眠のタイプによって睡眠薬はいろいろと使い分けられます。


6.睡眠薬

医師は入眠障害、中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒といった不眠のタイプ(表1)を考慮しながら薬剤を選択します。現在、ベンゾジアゼンピン系と非ベンゾジアゼンピン系の薬が睡眠薬としてよく使われています。ベンゾジアゼピン系薬剤は催眠作用のほかに抗不安作用を持っています。主となる作用が催眠作用のものを睡眠薬、抗不安作用が主のものを安定剤として使用します。不安や葛藤のため寝つきが悪い場合は睡眠薬よりも安定剤を、不安や葛藤が少ない不眠症では催眠作用を主とする睡眠薬が効果的です。

以前はバルビツール酸系、非バルビツール酸系、ブロムワレリル尿素などの睡眠薬が使われていましたが、これら古いタイプの睡眠薬は、 1)薬を飲まないとますます眠れないといった依存性、2)だんだんと効かなくなり、徐々に内服量を増やさなければ眠れないといった耐性、3)大量に服用した場合に呼吸中枢の働きが抑えられて死亡する、などといった問題がありました。しかしベンゾジアゼンピン系や最も新しい非ベンゾジアゼンピン系と呼ばれる睡眠薬ではこれらの問題点がほぼ解決されています。

また、睡眠薬は作用時間の長さによって、すぐ効き始めて2〜4時間で効果がなくなる超短時間作用型、 効果が6〜12時間持続する短時間作用型、12〜24時間持続する中間作用型、24時間以上持続する長時間作用型の4つに分類されます。寝つきが悪い入眠障害のタイプには超短時間作用型か短時間作用型の睡眠薬を、また夜中に目が覚める中途覚醒や朝早く目が覚める早朝覚醒のタイプには中間作用型や長時間作用型の睡眠薬が使われます。

表3 睡眠薬の種類
睡眠薬の種類 分類
ベンゾジアゼピン系薬剤(耐性や依存性を生じにくい安全な薬剤) 超短時間作用型
短時間作用型
中間作用型
長時間作用型
非ベンゾジアゼピン系薬剤(ベンゾジアゼピン系に比べて、さらに 自然な睡眠を誘導する薬剤として開発された) 超短時間作用型

7.睡眠薬の副作用

睡眠薬をある種類の抗生物質や降圧剤、胃潰瘍治療薬といっしょに内服すると睡眠薬の分解が遅れることにより作用が強く現れることがあります。また一部の健康食品やハーブ系のサプリメントも副作用を増強させることがあります。
睡眠薬の副作用として一般には次のようなものがみられることがあります。

持ち越し障害 ;睡眠薬の効果が翌朝以降にも続き、寝起きが悪かったり、頭重感、倦怠感などの症状がみられる現象
前向性健忘 ;睡眠薬を多量に飲んだりアルコールと併用したりすると、睡眠薬を飲んでから寝るまでの間にとった行動を覚えていないという軽い記憶障害(ボケるといった脳障害とは関係ありません)
筋弛緩作用 ;足がふらついたり、脱力感などの症状

最近ではこれらの副作用を軽減し、自然な睡眠を誘発する睡眠薬として非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が開発されています。寝つけない夜に寝酒を睡眠薬がわりに飲まれる方もおられると思いますが、アルコールによる睡眠は途中で目が覚めるなど睡眠の「質」が悪く、次第にアルコールが効かくなって増やしても眠れなくなるという耐性や依存性が強い上に、肝臓などへ悪影響をおよぼします。


8.快眠のために

快適な睡眠を確保するためには次のようなことに心がけてみませんか。

ぬるめのお湯(37〜39℃)でリラックス (熱い風呂はよくない)
カフェインを含まない飲物でリラックス(コーヒーや紅茶などのカフェインは覚醒作用がある)
好きな音楽やビデオ、読書などでリラックス(寝る前のゲームやパソコンは好ましくない)
15分程度のわずかな昼寝(午後の仕事の効率が上がり、睡眠のリズムができる)
夕方からの適度な運動習慣(寝つきを助け、熟睡をもたらす)
睡眠薬がわりの寝酒をしない
寝る前に喫煙しない(ニコチンは交感神経を刺激し、睡眠を妨げる)

医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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社団法人宮崎県トラック協会
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