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メニエール病
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ストレスの多い現代社会の中、めまいを訴える人が多くなりました。とくに高齢者のめまいは増加傾向で、これは年齢だけの問題ではなくストレスをかかえた生活環境の変化と大きく関わっていると考えられています。「メニエールがまた出た!」とはよく聞く話で、メニエール病はめまいの代名詞ともいえるほど一般に流通している言葉です。将来を期待された有能な野球選手がこの病気のために若くして引退せざるを得なかったのは有名な話です。メニエール病で悩んでいる人は、「突然にめまいに襲われるのでこわくて外出できない」、「発作的なめまいで転倒してケガをしてしまった」、「耳鳴りや耳がつまった感じで不愉快!」などと訴えられます。


1.メニエール病とは

メニエール病は内耳の「内リンパ水腫」によって生じる、@反復する回転性めまい、A耳鳴り、B難聴を特徴とする耳の病気と考えられています。

1861年にフランスのメニエール(Prosper Meniere)がめまい、難聴、耳鳴り患者を最初に報告したことから、この名前が付いています。耳の病気であるメニエール病に対して、原因が明らかでないめまいを総称して「メニエール症候群」と呼んでおり、メニエール病と区別する必要があります。


2.厚生省(現在の厚生労働省)のメニエール病調査結果

1974年〜1979年に厚生省(現在の厚生労働省)研究班によりメニエール病の大規模な疫学調査が行われ、その結果メニエール病の患者は1)専門技術職に多い反面、農林・漁業従事者・単純労働者に少なく、2)精神的肉体的に疲労が大きく睡眠不足の人に多く、3)几帳面で神経質の人に多い傾向があったと結論しています。当時、メニエール病は中間管理職病といわれましたが、最近では中高年女性や仕事優先のサラリーマン族にも多いといわれています。発症のピークは男性40歳代、女性では30歳代であり、わが国では人口10万人あたり3.5人の患者数とされています。


3.メニエール病の原因

1983年に大阪大学の山川氏や英国のホールバイク氏らが、メニエール病の原因は内耳の内リンパ水腫にあると報告しました。内リンパ水腫とは内耳の中に詰まっている2種類の液体(内リンパ液と外リンパ液)のうち、内リンパ液が外リンパ液に対して相対的に過剰になってきた状態です。内リンパ液が過剰に産生されるか、または内リンパ液の代謝吸収(新陳代謝)が障害されるためにおこると考えられています。しかし内リンパ水腫がどうしておこるのかについてはストレス説やウイルス感染説、アレルギー説のほか自律神経の異常緊張説など多くの仮説があり、特定はできていません。

図1に耳の構造を示しました。内耳には蝸牛という聴覚の器官と、前庭・三半規管というめまいに関与する平衡感覚の器官があります。

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図1 耳の構造

4.メニエール病のめまい

メニエール病では、自分や天井などの周囲がぐるぐる回るような感覚のめまい(回転性めまいと呼んでいます)が多いといわれています。しかしながら、船に乗ってゆれているような感覚や雲の上を歩いているような感覚のめまい(動揺性めまい)や気が遠くなるような、血の気が引くような感覚のめまい(失神性めまい)を感じることもあります。したがって、メニエール病を的確に診断する上でめまいの性状や持続時間などの情報がとても大切になります。

典型的なメニエール病はめまい発作時に、まず耳鳴りが大きくなり、次第に耳が聞こえなくなってふらふらし始め、天井がぐるぐる回るような回転性めまいに襲われます。このめまいは30分から数時間続きます。めまい発作を繰り返しているうちにめまいがなくても、次第に耳鳴りや難聴がひどくなったりします。


5.メニエール病発作時の対処法

メニエール病のめまい発作の前兆として、耳鳴りや耳がふさがったような感じ(耳閉感)、ふらふら感などがあらわれることがあります。転倒してケガをしないように、まず多くの場合耳閉感のある耳を下にして横になって安静にします。音に対して非常に敏感になりやすく(音響過敏症)、音が割れて聴こえる(複聴)などの症状が出現し、また動いているものを見ると気持ちが悪くなるので音楽や騒音を避けテレビを消して目を閉じ、部屋はなるべく暗くして静かに休むことが大切です。また、無理に頭や体を動かすと耳を刺激してめまいが強くなったり、嘔吐をおこす場合もあります。


6.メニエール病の治療法

メニエール病のめまい発作がおこったら、発作にともなう吐き気、嘔吐に対する対照療法がおもな治療になります。病院ではメイロン(重炭酸ナトリウム)という薬や嘔気、嘔吐を抑える薬を注射します。また抗ヒスタミン剤、利尿剤や精神安定剤などの投与も行います。めまいが消えても難聴や耳鳴りが残っている場合はしばらくの間、めまい止めや循環改善剤、利尿剤などを内服します。内服や点滴で効果が少なく、繰り返す場合はカウンセリングや手術などが必要となることがあります。

  1. 利尿剤;わが国ではイソソルビドという内服薬がよく使用されており、聴力改善も期待できます。めまい発作時にはグリセオールという高浸透圧利尿剤の点滴も有効です。これらは原因となっている内リンパ水腫を改善する目的で使用します。
  2. ビタミン剤や末梢血流改善剤;内耳の神経細胞や内耳神経の活動を改善する目的で使います。
  3. 鎮静剤;発作のときの不安を改善させたり、ストレスによる内リンパ液の過剰産生を抑制すると考えられています。
  4. メイロンの注射;おもに血管拡張作用による内耳血流量の増加によりめまいが改善すると考えられています。
  5. 前庭機能低下をめざす治療法(アミノ配糖体の鼓室内注入)
    ゲンタマイシンなどのアミノ配糖体を鼓室内に注入して前庭機能の低下または廃絶をもくろむ治療法です。
  6. 手術
    1. 内リンパ嚢開放術;内リンパ嚢に穴を開けて増えすぎたリンパ液を排出する手術です。
    2. 前庭神経切断術;脳神経の8番目の神経である内耳神経は聴覚に関係する蝸牛神経と平衡感覚に関係する前庭神経の二つから成り立っており、この前庭神経を切断する手術です。

7.メニエール病の診断方法

聴力検査で低音部(周波数の低い音)の聴力が下がっていて、めまい、耳鳴りなどの症状が同時におこっていればメニエール病の可能性が大きくなります。また利尿剤を点滴(グリセオールテスト)して聴力が改善すれば内リンパ水腫が存在するメニエール病の可能性が高くなります。精密検査は以下のとおりです。

  1. 聴力検査;低音域の聴力障害のため、難聴を自覚するよりも耳閉感を訴えることが多いようです。さらに、めまい発作が進行する場合は中音域から高音域の聴力障害が見られるようになり、高音の耳鳴りを自覚することが多くなります。聴力低下に対してグリセロールやフロセミドを点滴したり内服したりして、聴力が回復する場合は内リンパ水腫が存在することが推定できるためにメニエール病の診断検査として使われます。フロセミド検査は前庭機能を、グリセオール検査は蝸牛機能を指標として用います。
  2. 平衡機能検査;直立・足踏み検査。
  3. 眼振検査;内耳に異常があるときに出る、目の不安定な動き(眼振)を観察します。
  4. 耳のレントゲン検査
  5. 脳神経学的検査;CT検査やMRI検査などの画像検査や臨床症状をもとにほかの原因がないかを診断します。

8.メニエール病の鑑別診断

メニエール病にみられるめまい発作は次のような疾患と鑑別する必要があります。

  1. 鼓膜穿孔
  2. 飛行機の降下中やダイビング中の鼓膜への気圧変化がもたらす気圧性中耳炎
  3. 細菌またはウイルスの感染による急性中耳炎
  4. ウイルスによる三半規管への炎症によって引き起こされる前庭神経炎
  5. 良性発作性頭位眩暈症;片側の耳を下にして横たわる場合や頭を後へ傾けるなど特定の頭の位置が原因でおこります。多くは内耳への損傷、中耳炎、耳の外科手術、内耳への動脈の閉塞など平衡感覚に関する内耳の三半規管の損傷によっておこると考えられています。
  6. 帯状疱疹ウイルス感染;外耳と外耳道内部に水泡を形成、聴神経の感染へと進み、激しい耳の痛みとともに難聴、めまいをひきおこします。
  7. 突発性難聴;通常片側の耳に重度の難聴と耳鳴り、めまいを生じます。流行性耳下腺炎、インフルエンザ、麻疹などのウイルス性感染のほか、ストレスも大きな原因となっています。
  8. 椎骨脳底動脈循環不全;脳血管の一部である椎骨脳底動脈が血流障害を引き起こすと、さまざまなレベルの意識障害にめまいを併発します。高脂血症や動脈硬化に原因することが多く、ふわふわ感を主体とする動揺性めまいが多くなります。
  9. 聴神経腫瘍;良性の腫瘍ですが難聴、耳鳴り、めまいをともないます。
  10. 薬物によっておこる耳の障害;ストレプトマイシンなど特定の抗生物質や利尿剤、アスピリン、キニーネなどの薬物によっておこります。

メニエール病の症状に加えて体の一部がしびれたり、ろれつがまわらない、意識を失うなどの症状がある場合には脳出血や脳梗塞、脳腫瘍など緊急を要する脳疾患のこともあるので速やかに脳神経外科、または神経内科を受診してください。また、繰り返すめまいは心臓の病気が原因となっていることもあるので全身的な検査が必要なこともあります。


9.メニエール病の発作を予防するために

メニエール病が起こった時の発作の程度を軽くしたり、発作の周期をのばすために薬物治療は効果的です。以前からメニエール病はストレスにより症状が悪化するといわれており、睡眠不足や過労、喫煙、食塩の多量摂取などのほか、仕事上の問題や家族の問題、病気、転居などのストレスがめまい発作の誘引となります。ストレスをコントロールする生活指導が、メニエール病の悪化を阻止するのに重要です。


−日常生活での注意点−

  1. 睡眠不足や夜更かしは避ける
  2. 長時間の運転やテレビ、読書は避ける
  3. 過労は避けて、適度な運動を心がける 
  4. 一日7g以下の減塩食事とし、水分をとり過ぎない
  5. アルコールは控える
  6. 内耳への血流障害のため禁煙する
  7. ストレスのかかる対人関係や心配ごとは避ける
  8. 自分なりにストレスを解消する方法を見つける
医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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社団法人宮崎県トラック協会
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