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肝臓癌に「ラジオ波焼灼療法」
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毎年、新しく肝臓癌(以下肝癌と呼びます)になる人の数は全国で年間30000人を超え、急激に増加しています。最近、肝癌治療のひとつとしてラジオ波という高周波によって凝固させてしまう「ラジオ波焼灼療法(Radiofrequency Ablation;RFA)」が注目されており、今後は肝癌局所治療法の主流となるのではと、期待が寄せられています。


1.肝臓腫瘍とその診断方法
図1 転移性肝癌(原発は胃癌)
図2 C型肝炎患者に発生した早期の原発性肝癌

肝臓の悪性腫瘍には肝臓以外にできた癌が転移してできた「転移性肝癌」(図1)と、はじめから肝臓内にできた「原発性肝癌」(図2)があります。原発性肝癌は30年前の4倍に増えており、その90%は肝硬変を合併しているといわれています。原発性肝癌は、そのほとんど(約95%)がC型肝炎やB型肝炎ウイルスが原因となり、慢性肝炎から肝硬変となり、結果的に肝癌を併発するケースがほとんどです。特にC型肝炎ウイルスからの肝癌が75〜80%を占めています。したがって早期に発見されてもすでに肝機能が低下している肝硬変状態であったり、また多箇所に肝癌が存在する(多発性)ことが多いため外科手術が可能なケースは30%しかないといわれています。また1個を完治できてもすぐにほかの場所に再発したり肝臓内で転移することが多く、2年で50%、5年で80%の再発率ともいわれています。

肝癌の診断は現在、α-フェトプロテインやPIVKA-Uなどの腫瘍マーカーや超音波検査の組み合わせが中心で、そのほかにCT、MRIなどをあげることができます。


2.ラジオ波焼灼療法とは

ラジオ波焼灼療法(RFA)の治療効果が近年注目をあびており、内科的治療の柱として肝癌局所療法の主流になりつつあります。また、ラジオ波焼灼療法の導入により肝癌に対する局所凝固療法は急速に普及してきています。

ラジオ波焼灼療法は1995年にアメリカで開発され、わが国では1998年に導入され、その後全国の先進医療機関で実施されるようになりました。ラジオ波焼灼療法が平成16年4月に医療保険で認可され、後で詳述する経皮的エタノール注入療法(PEIT)や経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)など、これまで局所治療の中心であった方法よりも有用性が高いことが示されるようになり、肝癌に対する局所療法は急速に普及することになりました。

ラジオ波は周波数約450KHzの高周波で、医療用電気メスなどに使用される高周波と同じです。このラジオ波を使って肝臓腫瘍組織を熱凝固して壊死させる治療法をラジオ波焼灼療法と呼んでいます。超音波検査で体外から腫瘍組織を観察しながら、ラジオ波の電極を内蔵したカニューレを挿入し、先端からラジオ波を発生させて腫瘍組織を焼灼するというもので、1回の焼灼で直径3cmの腫瘍組織を凝固できるといわれています。@1回で大きな範囲を破壊できるという経皮的エタノール注入療法(PEIT)の長所と、A想定どおり、確実な壊死範囲が得られるという経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)の長所を兼ね備えた治療法で、従来の方法よりずいぶん優れた方法といえましょう。


3.ラジオ波焼灼療法の適応となる病態
図3 腹水をともなう肝硬変で手術が不可能だったケース

肝癌の治療法は癌の大きさや個数、その位置、残された肝臓の働き(肝予備能)などを考慮して決めます。しかしながら、肝癌が発見されたときには既に肝硬変や癌が多発していることが多いため、外科的な治療が困難なケースに出会うことも多く、このような手術が困難なケース(図3)には肝臓に大きな負担がかからない局所療法が選択されるべきでありましょう。なかでもラジオ波焼灼療法はその治療効果が高いこと、短期間で治療を完了し入院も短期間ですみ、また局所再発率が低いことなどから今後肝癌治療の主軸になるとも考えられています。

これまで直径3cm以下の肝癌に対して実施されたラジオ波焼灼療法の成績を、肝切除術を実施された人と比較してみると、どれくらい長く生きられるか?という長期予後は手術と同等の効果が得られたとする報告が多く、今後ラジオ波焼灼療法は第1選択の治療法になり得ると考えられます。

ラジオ波焼灼療法の適応は一般的には以下のとおりと考えられています。

  1. 肝癌が切除不能または患者が外科的切除を希望しない
  2. 血小板5万/mm3以上、プロトロンビン時間50%以上
  3. コントロール困難な腹水がないこと
  4. 3cm3個以内または5cm以内単発

しかしながら肝癌が5cm以上でも、また個数が4個以上であってもケースによってはラジオ波焼灼療法を実施している施設もあります。


4.これまでの治療法

これまで肝癌に対する治療法は、残された肝臓の働き(肝予備能)がよく手術が可能と考えられるケース(図4)では、やはり手術が一番目に選択され、その成績が最も良好です。しかし、肝癌発見時に肝予備能が低下し、手術が不可能と考えられるケースでは局所療法が選択され、PEIT、PMCT、肝動脈塞栓術、肝動脈内抗癌剤投与による化学療法(動注化学療法)、放射線療法などが単独または組み合わせて治療されてきました。

図4 肝硬変ながら手術が可能だったケース
図5 肝動脈造影検査で肝癌部分が濃く染まる
1)経皮的エタノール注入療法(PEIT);

超音波で観察しながら、針を経皮経肝的(局所麻酔した皮膚から肝臓内を進める)に肝癌をめがけて刺しエタノールを注入、エタノールの脱水作用とタンパク変性作用による腫瘍細胞の凝固壊死を利用した治療法です。

2)マイクロウエーブ凝固法(PMCT);

1997年開発された本法は電子レンジに用いられる高周波(マイクロ波:2450MHz)をあてて肝癌を加熱して治療する方法です。肝癌の被膜や壁により凝固範囲が一定でないというPEITの問題点は改善されましたが、一度に凝固壊死できる範囲が狭いため3cm以下の腫瘍でも数回にわたり穿刺や通電が必要で、大きな壊死範囲を得るために複数本の穿刺針を使うなどの工夫が必要でした。

3)肝動脈塞栓術;

肝癌は一般的に動脈が集中しており、肝動脈を造影することにより造影剤が肝癌病変部に集中し染まって見える(図5)ため、この動脈にある特殊な塞栓剤を含む抗癌剤を注入します。この方法は、ほかの局所療法が対象とならない進行癌の症例などに多く施行されます。


5.ラジオ波焼灼療法の治療方法の実際(図6)
図6 肝癌へ向けて穿刺針挿入
図7 ラジオ波焼灼療法に使う穿刺針

あらかじめ痛み止めを点滴しながら、肝癌の存在部位をまず超音波検査にて確認し、その後針を刺す皮膚を局所麻酔し、カニューレを穿刺(図7)し、その先端の針からラジオ波を発生させ、腫瘍を100℃前後の熱で凝固壊死させます。通常1回の凝固で直径3cmほどの球として焼くことができ、焼灼時間は12分ほどかかります。

また肝癌の存在部位によっては皮膚から針を刺すことが困難なことがあり、この場合には全身麻酔下に腹腔鏡を腹腔内に挿入してラジオ波焼灼療法を実施したり、手術で開腹をして直視下にラジオ波焼灼療法をおこなうこともあります。全身麻酔下の治療は肝予備能が保たれていないと実施できません。このようなラジオ波焼灼療法の治療効果はおもにCT検査で評価しています。


6.ラジオ波焼灼療法の偶発症

ラジオ波焼灼療法を行うにあたっては出血、発熱、肝障害、感染により肝臓内にうみがたまる肝膿瘍のほか、周囲の臓器を熱で傷つけてしまう結果、腸穿孔などがおこることがあり、細心の注意が注がれます。


7.これからの展望

先頃、宮崎大学医学部の第2内科前教授 坪内博仁先生の研究グループがC型肝炎から発症するケースが多い肝癌を、発症の1年前に高い確率で予測できる新しい診断技術を開発したと報じられ、大きなトピックスとなりました。C型肝炎に関係した肝癌の発生がいち早く予測できることはC型肝炎罹患者にとってはたいへんな朗報です。α-フェトプロテインやPIVKAUなどの腫瘍マーカーの増加や超音波検査の組み合わせによる現在の診断方法では限界があります。しかし坪内先生らの研究によれば、診断は血液1滴で可能で、手軽で精度の高い発症予測が可能となり、治療の成功率がぐーんと高まるものと期待されています。


医療法人 将優会クリニックうしたに
理事長・院長 牛谷義秀
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